知的な文章を書くために

知的な文章とは、難解な語句を使った文章のことではありません。それでは、単に読みにくい文章なだけです。大学入試の国語試験のような文章では、WEB上では誰も読んでくれないでしょう。

ここでは、知的なわかりやすい文章の筆頭であるAppleの文章をもとにAppleの文章やコピーの特徴は何なのか、知的なわかりやすい文章を書く秘訣はどこにあるのかを解説します。

Appleの文章

Appleの文章のイメージは、知的で洗練されているものが多いのではないでしょうか。例えば、iPhoneXの冒頭メッセージ文は、以下のようになっています。

私たちはずっと変わらないビジョンを持ち続けてきました。
すべてがスクリーンのiPhoneを作ること。デバイスそのものが
体験の中に消えてしまうほど夢中になれるiPhoneを作ること。
...(中略)...そのビジョンをすべて現実のものにします。
iPhone Xへようこそ。ここから未来が始まります。
iPhoneX - Apple (日本)

体現どめ、ですます調、呼びかけが上手く組み合わされ、とても綺麗な日本語となっています。もちろん、体現止めなどの手法が使われていますが、それを抜いても、やはりAppleらしい文章だなという印象です。

では、Appleらしさとは、どこに現れているのでしょうか。

文章の個性は、副詞に現れる。

Appleの文章を解析してみると、その傾向が見えて来ます。

以下のデータは、Appleのサイト上の文章を、2万文字以上集め、品詞ごとに分解したデータです。

品詞 割合
名詞 「iPhone X」「私たち」「ビジョン」 33.8%
動詞 「変わる」「持つ」「続ける」 11.2%
形容詞 「新しい」「ふさわしい」「ない」 1.6%
副詞 「ずっと」「さらに」「その」 2.3%
感動詞 「ようこそ」「さあ」「さよなら」 0.1%
接続詞 「そして」「だから」「しかも」 0.3%

それぞれ、どのような語彙が含まれているか、品詞ごとに見てみましょう。

動詞

「変わる」「持つ」「続ける」「くる」「作る」「消える」「しまう」「なれる」「できる」「する」「始まる」「広がる」「帯びる」「至る」「せる」「ためる」「奪う」「詰め込む」「れる」「ある」「使う」「いる」「慣れ親しむ」「操れる」「押す」「戻れる」「まとめる」「作れる」「始める」「たどり着く」「置き換える」「驚く」「撮る」「使える」「収める」「られる」「磨く」「生まれる」「折り曲げる」「沿う」「呼ぶ」「仕上げる」「優れる」「映し出す」「見る」「合う」「見える」「楽しむ」「観る」「重ねる」「もたらす」「引き立てる」「施す」「拭き取れる」「思う」「組み込む」「見つめる」「囲む」「兼ね備える」「おる」「保つ」「備える」「しぶく」「守れる」「なる」「守る」「済ませる」「触れる」「生む」「なりすます」「離れる」「知る」「わかる」「かぶる」「ひる」「生やす」「かける」「開ける」「届く」「読む」「下げる」「とらえる」「ぼかす」「生み出す」「異なる」「呼び覚ます」「詰め込める」「読み取る」「増す」「合わせる」「作り出す」「照らす」「つける」「当てる」「入る」「飛び込む」「乗る」「上げる」「ぶれる」「見張る」「映る」

非常に多くの動詞を使っていることがわかります。

形容詞

「新しい」「ふさわしい」「ない」「美しい」「厳しい」「高い」「深い」「すばやい」「ほしい」「賢い」「明るい」「うれしい」「楽しい」「大きい」「速い」「細かい」「薄暗い」「難しい」「短い」「長い」「良い」「薄い」「少ない」「多い」「やすい」「広い」「小さい」「詳しい」「人間らしい」*

漢字を多めに使った、美しい形容詞を使っていることがわかります。

副詞

「ずっと」「さらに」「その」「まったく」「初めて」「最も」「極めて」「小さな」「同じ」「自然に」「どの」「どう」「ついに」「そんな」「この」「まるで」「一段と」「さらなる」「これから」「しっかり」「一度」「まず」「すっきり」「そのまま」「より」「大きな」「思う存分」「あらゆる」「そのうち」「同時に」「こうした」「よく」「ぴったり」「もっと」「大いなる」「どんな」「かつて」「すでに」「実に」「どうぞ」「広々」「たっぷり」「次に」「そうした」「ますます」「もう」「常に」「あっという間に」「突然」「すぐ」

とくに特徴的な表現が、副詞になってきます。例えば「極めて」や「まるで」や「さらなる」などは、普段文章を書いていて、なかなか出てこない表現かと思います。

これらの副詞がAppleらしさではないでしょうか。
たとえば、ここに上がっている副詞を使って一文書いてみますと、

そのチームワークは、まるでジャズの演奏のように、ぴったりと旋律が整い、それでいて個人が極めて自然に振舞っているような、優雅さを兼ね備えている。

と、Appleのサイトにあるような知的な文章になります。

まとめ

Appleの文章をもとに、知的な文章を書くにはどうしたらよいかを解析しました。文章や記事を書く際には、場面に応じて知的な文章を書きたいというケースは多いのではないでしょうか。

知的な文章の鍵は副詞にあるのかもしれません。

この記事が記事やキャッチコピーを書く際の参考になれば幸いです。

#ライターの文章力