1. プレスリリースの基本のフォーマット

プレスリリースの基本の構成は、「レターヘッド、タイトル、リード文、本文、画像、連絡先」の6つの要素に分けられます。このフォーマットをひな型として、忙しいメディア関係者に伝わりやすく目を引く内容を目指して、各社に応じたレイアウトを組んでいきます。

プレスリリースのテンプレート

2. レターヘッド

レターヘッドには、「プレスリリース・企業名ロゴ・日付・報道関係各位」の4つの要素を記載します。

それぞれのテキストは各社によって多少異なる場合もあります。例えば、「プレスリリース」というテキストを、「Press Release」や「News Release」などと記載するケースも見られます。レターヘッドは定型のため、次の本文に注目してもらうためにも、凝った記載は必要ありません。

3. タイトル

タイトルは、最も力をかけるべき箇所です。メディア関係者はまずタイトルを見て、本文を読むべきかどうかを判断するためです。そのため、タイトルにはプレスリリースを通して一番伝えたいメッセージを簡潔に記載します。

3-1. タイトルの文字数は50文字程度を目安に

タイトルは50文字程度を目安に、さらに記載したい場合にはサブタイトルに分けて記載します。サブタイトルには、タイトルをサポートする補足情報を100文字以内で書くのが適切です。

50文字程度を目安とする理由としては、人間の目で見たときの把握のしにくさに加えて、配信代行サービスの文字数制約の観点や、プレスリリースが転載された際の検索エンジンの文字数も影響しています。例えば、PRTIMESの場合には、タイトル・サブタイトルの文字数はそれぞれ100文字以内に制限されています。さらに、トップページに表示されるのはPC版で50文字、スマートフォン版で30文字となっているため、重要なことが後方に書かれた長いタイトルの場合、情報が伝わらない可能性があります。タイトルを50文字以上にする場合でも、伝えたい点はできるだけ前方に書くようにします。

配信時は文字数に制限がある

プレスリリースが転載された際の検索エンジンの文字数は、32文字から40文字です。このような点にも配慮することで、記者以外の一般の方にも魅力が伝わりやすくなります。

3-2. 説得力のあるタイトルをつける

プレスリリースの要ともいえるタイトルには、説得力のある言葉を使います。メディア関係者は1日に数百のプレスリリースを受け取っていることを念頭に、タイトルだけで興味を引くようにします。

説得力のあるタイトルにはいくつかの要素があります。

  • ニュース性のあるタイトル
    世の中のタイムリーな関心事や社会問題とリンクしているタイトルを付けます。このような手法は海外では「ニュースジャッキング」と呼ばれています。例えば、少子高齢化、環境問題、時事問題、若者の流行などトレンドに関連付けた発信をすることで、価値を高めることができます。

  • 目を引く表現
    ありきたりの表現ではなく目を引く表現を心がけます。毎日多くのリリースが発信される中で、ワンパターンでどこかで聞いたことがあるようなタイトルは見過ごされてしまう可能性があります。このようなありきたりの表現は紋切り型言葉と言われます。「新商品発売のお知らせ」「セミナー開催のお知らせ」のような使い古された表現ではなく、そのリリースを読むべき独自の理由を意識して書くようにします。

  • 具体性のある数値
    説得力を持たせるために、可能な場合には具体的な数値を入れます。例えば「多数のお客様」の代わりに「全国1万社のお客様」、「多額の報酬を達成」の代わりに「月収100万円を達成」といった数を入れることで、根拠をもって相手を説得できるようになります。

3-3. タイトルの注意点

タイトルに、インパクトのある「日本初」「業界初」などの表現を使う場合には、それが誤りでないことを確認してから使用する必要があります。例えば「日本初」「世界初」の場合には、実際に日本初や世界初である必要があります。自社で調べた調査を根拠としている場合には「当社調べ」などの注意書きを添えます。

3-4. タイトルによく使われる表現

タイトルによく使われる表現としては、以下のようなものがあります。日本語は述語が最後に来るため、意味を把握するには最後まで読まないと分からない言語です。そのため、説得力を持たせるには動詞に気を配ることが大切です。

よく使われる表現 使用されるシーン
新しい商品を販売するとき 「〜が新登場」「〜を販売開始」「〜をリリース」「〜を提供開始」「〜を発表」 「〜を公開」
商品の取り扱いを開始するとき 「〜の取り扱いが開始」
実績を公表するとき 「〜を突破」
イベントを開催するとき 「〜を開催」「〜が期間限定オープン」
自治体などと実証実験を開始するとき 「〜の実証実験を開始」
調査を実施したとき 「〜調査を実施」
調達や企業合併のとき 「〜に関するお知らせ 」「〜を発表」
展示会に出展するとき 「〜に出展」

4. リード文

リード文には、リリース全体の要旨を2、3文で書きます。書き出しの書き方は企業によりますが、多くの場合「株式会社○○○○(本社:東京都渋谷区、代表取締役:○○▼▼)では……」のような定型をとります。ジャーナリストの70%は、新しいプレスリリースを読むのに1分未満しか費やさないとも言われます。そのため、タイトルとリード文だけで大概の疑問に答えられるようにする必要があります。

4-1. リード文の文字数は500文字以内を目安に

リード文の文字数は、端的に概要が理解できるようにするために500文字以内を目安に書きます。配信代行サービスの文字数制限として、PR TIMESの文字数制限も500文字となっているため、配信代行サービスを使うためには、細かい文字数にも気を配る必要があります。

4-2. 本文まで読み進めてもらえるように書く

リード文の目的は、タイトルで目を引いた後、本文まで読み進めてもらうことです。そのためには、「誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どのように」といった疑問のすべてに答えるリード文である必要があります。短く端的な文章で詳細を示して、「本文を読み進める必要がある理由」を説明します。

5. 本文

箇条書きを使ったりすることで簡潔にわかりやすい文章で表現します**。必ずしも全文が読まれるとは思わずに、テレビの視聴者や新聞の読者が知りたいことの順番で、重要なことを前方に記載します。

5-1. 本文の文字数は8000文字以内を目安に

本文の文字数は、配信代行サービスを利用する場合を考慮して、長くても8000文字以内で書きます。

5-2. 重要なことを前方に書く

メディア関係者が好む「逆ピラミッド」の順で情報を書くことで、「リリースを読まなければならない理由」を説明します

まずは最も重要で興味深い情報を最初に提示します。これは読者が最初に知るべき内容であり、記事全体の要点を表しています。これにより、読者は最も重要な情報を素早く把握できます。次に、最重要情報に続いて重要な情報を提供します。例えば、発表の中心的なテーマや主要なポイントを展開して興味を引き続けます。最後に補足情報です。補足的な情報や詳細な説明として、背景、関連するデータ、引用、および他の関連する詳細を書きます。

画像の代替文章
引用:wikipedia

5-3. 注意を引く短い小見出しを活用する

本文は、いくつかのブロックにわけて、ブロックごとに小見出しをつけて書きます。プレスリリースが、くまなく全文読まれることは多くありません。しかし、小見出しやリンクは人の目が集まりやすい点です(※)。小見出しに要点を記載することで、忙しいメディア関係者に趣旨を理解してもらいやすくなります。

[*出典出典:Nielsen Norman Group「Eyetracking Web Usability」]

5-4. 信頼できる情報を示す

メディア関係者は、事実を大切にします。「68%のジャーナリストは、単に事実を知りたいと考えている」といった研究もあります。そのため、発表の重要性や文脈が理解されるように、リリースの内容が信頼できる事実を示します。例えば、権威のある経営者や企業の声や、実際のユーザーの反応を書くことで、重要性を強調します。

5-5. 箇条書きを使う

並列になる情報を伝える場合には箇条書きが有効です。「53%のジャーナリストは、主要な事実が箇条書きで提示されると役立つと考えている」と言われるほど、効率よく情報を収集するには、箇条書きが喜ばれます。

5-6. 補則情報はリンクを使う

本文中には、リリースで紹介する新商品やキャンペーンのランディングページ(LP)のリンクを記載します。LPは、プレスリリースを見た記者が、より詳しい内容を知りたい際の情報源として有効です。LPがない場合には、関連するWebサイトのURLを可能な範囲で記載します。ただしリンクの数が多いと導線が分散し、どのページを確認すればよいのかが一見してわかりにくくなります。多数の参考情報がある場合にも、数を1、2個に絞って記載します。

6. 画像

リリース内には、伝えたいイメージが直感的に伝わる関連写真や画像を使用します。画像を効果的に配置することで、文章を読まなくても「こんな絵が撮れる」ということを一目で意図を理解してもらえたり、取材時のイメージがわきやすくなったりするためです。例えば、新商品のパッケージ写真や、サービス利用中の画像、製品の画像などを配置します。

それ以外にも、本文中に、数値的な傾向が分かる図表やグラフを使用することで、一見して客観性のある情報であることを伝えます。

画像選定

6-1. 画像の注意点

画像を選定する際は、著作権の問題がなく、記事中でそのまま使えるようなクオリティが高いものをカラーで用意します。画像のクオリティはそのまま製品や企業のイメージにもつながるため、解像度が低い画像や、ピンボケの写真は使いません。画像の色味に関しては、ファックスで送信した際にも確認できるように、コントラストがはっきりした、白黒でも意図が伝わるものを使用します。

6-2. 配信代行サービスを利用する場合の画像

また配信時に配信代行サービスを使用する場合には、メインビジュアルに設定したい画像を1枚用意します。メイン画像はタイトルと並んで表示されるため、タイトルの内容を補足する画像であることが大切です。このメイン画像は、プレスリリースが他サイトに転載される場合にもメイン画像として扱われます。そのため必要に応じて文字要素を入れ込むなどの工夫も有効です。画像サイズは、大きくても5MB以内におさめます。

7. 連絡先

「報道関係お問い合わせ先」として、社名、担当者名、企業所在地、メールアドレス、電話番号、携帯電話番号、FAX番号など、広報の連絡先情報を記載します。記載すべき項目に決まった形はありませんが、会社代表ではなく、広報担当者に連絡が届くようにします。

7-1. メールアドレス

個人メールアドレスではなく「pr @ xxx.jp」のようにPR関係者全体向けのアドレスとすることで、メールの見逃しや退職や配置換えによる抜け漏れを防ぐことができます。

7-2. 担当者名

担当者名を記載します。担当者名は必須ではありませんが、分野によって担当者が分かれているような企業の場合には、担当者の名前を書いておくことで、コンタクトが取りやすくなるメリットがあります。

8. プレスリリースのテンプレート

このようにさまざまな点に注意が必要となるプレスリリースですが、ひとまず簡単にテンプレートで作成したい場面もあるでしょう。ここでは簡単に使えるテンプレートを4種類ご紹介します。

8-1. 業務提携のテンプレート

タイトル:○○と○○が業務提携契約を締結

リード文:○○株式会社(本社:○○県○○市、代表取締役:○○、以下「当社」)と○○株式会社(本社:○○県○○市、代表取締役:○○、以下「○○」)は、このたび、○○を図るべく業務提携契約を締結しました。

  1. 背景 社会的に○○が急成長し○○した状況を背景に、○○が求められています。
  2. 業務提携の目的 当社の有する○○と、○○が有する○○を組み合わせることにより、○○を生み出すことを目的としています。○○を両者で連携して進めることによって、○○のシナジーを発揮し、お客様にさらなるソリューションを提供いたします。 ■株式会社○○について ○○株式会社は、○○を掲げ、○○に取り組んできました。○○を社会に創出するために、今後も○○に取り組んでまいります。 ■株式会社○○について ○○株式会社は、○○を掲げ、○○に取り組んできました。○○を社会に創出するために、今後も○○に取り組んでまいります。

9. プレスリリースを書くときの15個の確認ポイント

プレスリリースでは、インパクトや、キャッチーさが重要な要素ではありますが、会社の公式情報として公表されるため、信頼性を保つ必要があります。信頼できるニュースソースであることを示すには、誤った情報でないことはもちろんのこと、誤字脱字や間違った表現などがないことを確認します。以下のポイントを確認して誤りを減らしましょう。

確認ポイント一覧

種類 確認ポイント
1 文章 誤字脱字・文法の誤りはないか
2 文章 専門用語を使っていないか
3 文章 過剰な敬語を使っていないか
4 文章 箇条書きを使って読みやすさに配慮しているか
5 文章 数字を効果的に使っているか
6 画像 カラーでも白黒でも文字が読み取れるか
7 画像 文字だけでなく画像が効果的に使われているか
8 内容 内容にうそや言い過ぎはないか
9 内容 意図的に隠している情報はないか
10 内容 優先度が高い順のレイアウトになっているか
11 内容 初見で読む人が最初の10秒で内容を理解できるか
12 法律 引用・転載がある場合は許可を得ており、文中の割合は3割以下になっているか
13 法律 フリー画像や人物写真を使っている場合、著作権・肖像権に問題はないか
14 法律 他社のロゴや社名を使っている場合、許可を得ているか
15 法律 他社を不公平な形で比較して批判していないか

9-1. 誤字脱字、文法の誤りはないか

誤字脱字、文法の誤りがないことは会社の公式文章の基本です。誤字・脱字は内容の信ぴょう性の乏しさに、文法のミスは誤読や信頼低下につながります。AI文法校正ツールwordrabbitを使えば、誰でも簡単に誤字脱字や文法をチェックすることができます。

9-2. 専門用語を使っていないか

業界や会社でしか使われない独自の専門用語や、定義が曖昧な言葉は使いません。報道関係者に、業界の常識は伝わらないことを意識します。

9-3. 過剰な敬語を使っていないか

日本語の場合「失礼のない文章を書かなくてはいけない」と思うあまりに、敬語の間違いをするケースが目立ちます。例えば「お召し上がりになられる」など、敬語に誤りがないかを確認します。

9-4. 箇条書きを使って読みやすさに配慮しているか

忙しい記者が短時間で読めるように、ポイントや機能を紹介する際には、箇条書きを使って「目で見たときの見やすさ」を高めます。

9-5. 数字を効果的に使っているか

効果や実態などをあらわすためには数字が有効です。報道関係者は具体的な数字を好みます。「すごい」「大量」「圧倒的な」などの曖昧な修飾語は使わずに、具体的な数字であらわします。

9-6. カラーでも白黒でも文字が読み取れるか

印刷したりファックスしたりしても画像上のテキストが読み取れるかどうかを確認します。画像や写真の色味や明るさには配慮します。

9-7. 文字だけでなく画像が効果的に使われているか

画像などを活用することで、第一印象で意図が伝わるかを確認します。プレスリリースは文章だけで表現するのではなく、全体のデザインを含めて考えます。

9-8. 内容にうそや言い過ぎはないか

「世界初」「No.1」「満足度100%」などの表現を含め、うそや誇大表現は企業のイメージを失墜させます。また図表や画像が部分的に切り取られて転載されたとしてもよいように必要に応じて注意書きなどを加えます。

9-9. 意図的に隠している情報はないか

読み手に伝えるべき情報であるにも関わらず、意図的に隠したり、目立たない位置に配置したりしている情報はないかを確認します。内容がメディアやSNSで取り上げられた際に、誠実な情報公開を行っていない姿勢が伝わることで、企業イメージの失墜につながることもあります。

9-10. 優先度が高い順のレイアウトになっているか

プレスリリースの1枚目の上部分から順に、重要な内容が書かれているかどうかを確認します。必ず最後まで読まれるとは思わずに、大事なことは前方に書きます。

9-11. 初見で読む人が、最初の10秒で内容を理解できるか

内容を初見で読んだ時に、10秒で要旨が伝わるかどうかを確認します。タイトルや第一印象で、先を読み進めてもらえるかどうかが判断されます。

9-12. 引用・転載がある場合は許可を得ており、文中の割合は3割以下になっているか(著作権法)

本文中に、別の著作者の文章を引用した場合には、出どころを明記するとともに、本文に対する引用文の割合は多くても2〜3割以下にとどめます。また、必須ではありませんが、トラブルを避けるために発行元に許可を得ておくようにします。
参考:東京都知的財産総合センター『中小企業経営者のための著作権マニュアル』P25

9-13. フリー画像や人物写真を使っている場合、著作権・肖像権に問題はないか(著作権法)

フリー画像を使う場合、外部公開文章で使用してもよいのか、画像の加工は認められているかなどを確認します。人物写真の場合は無断で撮影した写真ではないか、許可を得ているかを確認します。
参考:東京都知的財産総合センター『中小企業経営者のための著作権マニュアル』P29

9-14. 他社のロゴや社名を使っている場合、許可を得ているか(商標法)

他社のロゴや社名を記載している場合、許可を得ているかを確認します。許可を得ていない場合、商標権の侵害につながることがあります。
参考:特許庁『商標活用ガイド』

9-15. 他社を不公平な形で比較して批判していないか(不正競争防止法)

他社との比較を行う場合に、不公平な形で批判していないかを確認します。他社比較を行う際には、客観的に比較できる方法で行い、トラブルにつながらないよう十分に配慮します。
参考:日本弁理士会『いわゆる比較広告は不正競争には該当しないのですか?』

10. プレスリリリースのネタ探し

プレスリリースを出す最初の手順は、内容を企画することです。どのようなネタをテーマに記事にするかを検討します。よく見られるのは、商品やサービスの提供開始や、キャンペーンや新プランの開始、イベントの開催告知、大会などの結果公表、統計情報の公開、製品の企業導入報告などです。

ネタ探しのコツは、メディアに取り上げられるプレスリリース内容の特徴を意識することです。以下の特長に当てはまる企画は、数あるプレスリリースの中でも注目を集めやすい傾向があります。メディアの担当者は、取り上げることで社会にインパクトを与えられる内容を求めるためです。どれか一つではなく複数が当てはまるように企画を練っていくのがポイントです。

取り上げられるプレスリリースの特徴

  • タイムリーな内容(たった今、多くの人が興味がある内容)
  • 社会的意義がある(社会問題の解決につながりそうな内容)
  • ニュース性がある(世の中が関心を持ち話題になりそうな内容)
  • 人間味がある(人物がユニークで世の中の関心を集めそう)
  • 多くの人に知られている(有名なものや有名人)
  • ストーリー性がある(作った会社、人物などの開発話を交えることでコンセプトが伝わるもの)
  • これまでに無い(世界初、業界初など新しい技術や考え方)
  • 季節性が高い(夏季限定など希少性や特別感がある)
  • 地域性が高い(地域に限定された特別な情報)

プレスリリースのネタ探し

ネタ探しがうまくいかず、「プレスリリースを出すような企画がない」という場合もあります。そのような場合の解決策の一つは、広報担当者が社内の会議に顔を出して情報を収集したり、社長や役職者と定期的に打ち合わせの場を設けたりすることで、いろいろな切り口を探すことです。

11. プレスリリースの配信

プレスリリースが完成したら、メディア関係者に向けて配信します。送り方には、配信代行サービスを利用する方法と、自社で作成したメディアリストに基づいて配信する方法があります。

プレスリリース配信代行サービスのメリットは、幅広い層にプレスリリースを見てもらえたり、メディア関係者が過去のものを検索できたりすることです。メディアリストを作成して個別配信する方法には、興味関心が高い関係者にスポットで配信できるので読まれる可能性が高いというメリットがあります。配信方法を使い分けたり併用したりすることで、適切にプレスリリースを配信します。

配信の際には、自社のコーポレートサイト内に全てのプレスリリースを掲載します。プレスリリースの情報は会社の公式情報であるため、メディア関係者以外にも多くの人の目に触れるようにしておく必要があります。

プレスリリースの配信方法

  • 配信代行サービスで配信する
  • メディアリストを作成して配信する

11-1. 配信代行サービスで配信する方法

1つ目の配信方法が、「PR TIMES」「@PRESS(アットプレス)」「ValuePress(バリュープレス)」などの有料のプレスリリース配信代行サイトを使う方法です。配信代行サービスは、Webの配信プラットフォームで、ネット上からさまざまなメディア担当者宛てに一斉にプレスリリースを送ることができます。配信代行ツールにはいくつかの種類があるため、企業の方針や予算にあわせて適切なものを選択します。配信ツールを使用することで、コストはかかりますが、手間無く幅広い送信先に一斉に発信することができます。

配信代行サービスで配信する方法

11-2. 主要な配信代行サービスの料金比較

プレスリリース配信ツールの金額は、単発で配信する場合1回3万円程度が相場で、月額では3〜8万円の定額プランが設けられています。リーズナブルなものの場合、「ValuePress」が1配信3万円、月額3万円と7万円のプランがあります。

プレスリリース配信プラットフォームの料金

配信サービス 料金例 媒体登録数 配信数
PR TIMES 3万円(1配信)・8万円(月額) 12000媒体・16000名(個人記者) 最大300媒体+16614名
ValuePress 3万円(1配信)・3万円(月額)〜 11000名(個人記者) 最大1000名
@PRESS 3万円(1配信)〜 8500媒体 最大400媒体
共同通信PRWire 78000円(単発) 2250媒体 非公開
プレスリリースゼロ 無料 非公開 非公開

※2020年2月現在の、各社公式サイトからの情報です。

プラットフォームごとの違いとして、「PR TIMES」は最大手、「ValuePress」は比較的リーズナブル、「@PRESS」は実績が多いという特色があります。それぞれ費用や配信媒体数に違いはありますが、複数のメディアのデスクや記者に対して一斉にプレスリリースが配信できる機能に違いはありません。

11-3. 無料配信代行サービス

プレスリリースを無料で配信できるサービスとしては、「プレスリリースゼロ」が有名です。配信費用は完全無料です。ただし無料でどの程度の効果が期待できるかは公表されていません。

大手の「PR TIMES」「ValuePress」にも無料プランがあります。例えば「PR TIMES」には設立2年未満のスタートアップのプレスリリース配信が無料になるプランがあり、「ValuePress」には20媒体限定の無料フリープランが設けられています。条件が合えばこれらのサービスを使うことも検討します。

11-4. 配信代行サービスのメリット

一斉配信ツールのメリットとしては、コネクションのないメディアにも一斉配信できることや、TwitterなどのSNSアカウントにも同時配信されることがあります。多くのメディア担当者へ幅広く配信されるため、そこから取材につながることがあります。

配信代行サービスのメリット

  • コネクションがないメディアにも一斉配信できる
  • SNSアカウントにも同時配信される
  • 提携メディアに転載される
  • サイト内で後々検索されることがある

11-5. 配信代行サービスのデメリット

反面、配信代行サービスのデメリットは、配信したものの反響がなく、効果が見えにくいことも多いという点です。広報担当者は一斉配信ツールを含め一日に何百通ものリリースを受け取るため、その中から「まず興味を持って手にとってもらう」だけでハードルが上がります。

配信代行サービスのデメリット

  • 効果が見えにくい場合もある
  • 配信コストがかかる

11-6. メディアリストを作成して配信する方法

2つ目の方法は、自社でメディアリストを作成して配信する方法です。メディアリストとは、自社の活動に興味を持ちそうな報道関係者の配信先一覧をまとめたリストです。

メディアリストに対して配信する方法

配信方法としては、メール・Fax・郵送などがあります。メールで配信することがほとんどですが、場合によってはFax・郵送で送ったり、手渡しを行ったりします。

11-7. メディアリストのメリット

メディアリストを作成して個別配信するメリットは、取材につながる可能性が高いメディア関係者にだけプレスリリースを配信できることや、一部の関係者にだけ前もってリリースを配信できることです。記者はそれぞれ担当分野を持っています。業界や商品に高い関心を示しそうな記者にだけ配信することができるため、読み飛ばされる可能性が低くなります。場合によっては、前もって情報をリークすることで特定のメディアに取り上げてもらいやすくなります。

メディアリストのメリット

  • 取材につながる可能性が高いメディア関係者にだけ配信できる
  • リスト自体が企業の資産になる
  • コストがかからない(人件費は別)

11-8. メディアリストのデメリット

メディアリストのデメリットは、リストを作成する手間がかかることです。どのようなメディアにリーチすべきかは企業やサービスによって異なるため、それぞれに最適なリストを自身で作成する必要があります。作成後も、担当者の異動による配置換えがあるため、定期的なメンテナンスは必要です。

また、リストの連絡先へ一方的に配信するだけの関係性ではなく、リスト内の記者やテレビディレクターとの定期的な情報交換によって、コミュニケーションの質を高めることも意識します。

メディアリストのデメリット

  • リストを作成するには時間と手間がかかる
  • リストをメンテナンスし続ける必要がある
  • リスト内の報道関係者とのリレーションを築いておく必要がある

11-9. メディアリストの送付先一覧の作成方法

メディアリストを作成するには、自社の業界や商品に関心を示しそうなメディア関係者を探し出して、まとめます。単にメディア関係者をリストアップすればよいのではなく、関連度が高そうな記者やディレクターだけを抽出します。これまでに取材された記者、紹介してもらった記者など連絡先をまとめます。

送付先一覧リストの作成方法

これまで取材されたことがなく、送信先をゼロから作成する場合には、新聞やWebメディア、雑誌、テレビなどの担当者を探り当ててコンタクトを取る方法もあります。例えば、新聞やWebメディアの場合には、記者の専門分野が決まっていることが多いため、競合他社が掲載された記事や業界特集記事にある記者の名前を確認するなどの方法でも確認できます。テレビの場合には、エンドロールでディレクターを確認してコンタクトをとるなどの方法があります。ただし、メディア関係者は多忙なため一方的な連絡は非常に敬遠されます。メディア関係者の閑散期と言われるお盆休みや年末年始に連絡する、しつこい連絡は控えるなどの配慮が必要です。

11-10. プレスリリース配信のタイミング(時間・曜日)

プレスリリースを配信するタイミングは、土日は避けて平日の朝一か夕方に配信するのがよいという全体傾向が明らかになっています。プレスリリース配信の「ValuePress」によると、配信時間・配信曜日には一定のルールがあります。テレビは水曜日、木曜日の朝7時ごろと、夜の18時~20時ごろに閲覧数が増加し、新聞は火曜日、木曜日、金曜日の夕方17時ごろに閲覧数が増加する傾向があります。

出典:ValuePress調査『プレスリリースの効果的なタイミング(曜日・時間)』

配信タイミングは、リリースの内容によっても異なります。例えばイベントや講座の場合には、記事化されるタイミングを見越して、曜日は関係なく、あえて開始前日に打つ場合もあります。ターゲットによっては配信タイミングを朝の通勤時間の時間帯に設定するケースもあります。

配信タイミング

「プレスリリースをいつ出すのが効果的か」という問題は、多くの企業で模索されています。それぞれのプレスリリースの特性ごとに、どの曜日・時間帯に取り上げられるのがよいのか、何日前に出すのがよいのかのデータやノウハウを蓄積しておいて検討を重ねます。

12. 取材対応

プレスリリースを出して取材依頼が来たら、取材日時の調整や取材を受ける担当者をアサインします。ただし取材を受けたからといって記事になるとは限りません。取材前には、「どのような内容が期待されているのか」「それに対して自社がどのようにアピールできるのか」を言語化して、記者が求めるイメージに沿うように対応します。やりとりの際はこまめな連絡を欠かさず、スピーディに対応します。

取材時には、原稿や内容の確認は行えない前提で回答します。一部分だけ切り取られても問題がないような発言を心がけます。原稿や内容の事前チェックをしつこく依頼したり、原稿チェックの際に好みで赤入れしたりすることは嫌がられます。記者の仕事は一営利企業の都合に偏った報道ではなく、客観的な情報を発信することです。「プレスリリース=宣伝」という意識は持たないようにしましょう。事前に内容が確認できる場合にも、最低限の事実確認(ファクトチェック)のみにします。

13. プレスリリースの効果測定

プレスリリースの効果を測定するには、媒体掲載数・広告換算費・SNSでの波及数などの数値を蓄積して比較します。数値化しておくことで、リリースを出して本当に効果があったかどうかが、月次・年次などの時系列で確認できます。どのような分野のリリースやプロモーションが効果的だったのか、逆にどのようなリリースは反響がなかったのかを分析することで、方向転換や内容の改善につなげることが重要です。

プレスリリースの効果測定方法

データを客観的に「見える化」しておくことは、経営者や関係者に「広報部門は何をしているのかよくわからない」と言われないための手段としても有効です。メディア掲載数だけが広報活動の成果ではありませんが、社内の理解を促進し、活動を行いやすくするという視点では数値分析が必要です。アナリティクスの観点を持ち、例えば、重要メディア掲載数(ゴール)だけではなく、小規模メディアへの掲載やSNSでの波及数(パス)なども評価することが、知見やノウハウの蓄積につながります。

プレスリリースの効果測定の方法

  • 4大マスメディアの媒体掲載数(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌での掲載)
  • Webメディアでの掲載数
  • 広告換算費
  • SNSの波及数(twitter、Facebook、Instagram)
  • SNSでのいいね数
  • 指名検索数
  • はてなブックマーク数
  • 問い合わせ件数
  • キャンペーンサイトなどのPV数
  • 特に重視している媒体での掲載数

13-1. PR効果測定ツールの活用

企業規模が大きくなると、効果測定のための数値を収集するだけでもかなりの時間がかかるため、専用の分析ツールを使用する場合があります。これらのツールを使うにはコストがかかりますが、数値を効果的に収集できたり、他社情報を網羅的に確認できたりする点はメリットです。

PR効果測定ツール

PR効果測定ツールで有名なものには、PR AnalyzerWebクリッピングがあります。いずれもコストがかかりますが、配信数やメディア掲載が毎月数十を超えるような企業の場合には、検討の余地があります。

13-2. KPIの定め方

広報におけるKPIの定め方は企業によって異なり、リリース発行数、いいね数、掲載数などの具体的な数値を設定する場合もあれば、全体を俯瞰した数値を設定する場合もあります。全体を俯瞰したKPIの一例として、レバレジーズ株式会社のパブリシティスコアがあります。パブリシティスコアとは、掲載されたメディアや内容を定性定量の両面からスコア化した数値です。全体をポイント化することでチームで目標を共有化しやすい、経年の変化が確認しやすいというメリットがあります。

参考:レバレジーズ株式会社 【広報/公開用】パブリシティスコア - Google スプレッドシート

13-3. 小規模な会社での効果測定方法

事業規模が小さい企業の場合には、媒体の規模にかかわらず取り上げられること自体を評価すべきです。大企業の場合には、すでにメディア担当者との継続的な関係性ができていたり、実績や社会的信頼性があったりすることから、多くのプレスリリースを出し、それが掲載されるというフローが出来上がっているケースも多く見られます。しかし小規模な会社の場合には、企業自体の知名度が低く、メディアとの関係性も信頼性も築けていません。そのため、まずは小さな媒体から実績を積み上げ、テレビや新聞への掲載を目指します。

小規模な会社での効果測定方法

例えば、スタートアップなどのベンチャー広報では、まずは本数、大小問わずメディアに取り上げられた数をKPIにする方法があります。小さな企業がプレスリリースを出す際には、製品やサービスの社会的意義をわかりやすい形で発信し続けることが大切です。大企業などでは年間数百本のプレスリリースを出している企業もあるほどです。意味のないものを出す必要はありませんが、製品のメリットを定期的に発信する体制や蓄積したノウハウはベンチャーにとっての資産となります。

14. 良いプレスリリースの例・成功事例

良いプレスリリースの例としては、株式会社ヤッホーブルーイングやガリガリ君で有名な株式会社赤城乳業のプレスリリースの事例が知られています。インパクトがあるプレスリリースの事例は参考になります。よいプレスリリースは、1枚で簡潔しており、ビジュアルやデータが効果的に使われています。さまざまな企業のプレスリリースを参考に、よい部分をまねてみることも一つの方法です。

14-1. プレスリリースの成功例

15. 【補足】ニュースリリースとプレスリリースの違い

プレスリリースとニュースリリース(ニュースレター)の違いは、プレスリリースとニュースリリースの概念の違いにあります。プレスリリースがマスメディアに宣伝してもらうことを目的とした従来型の発信を意識した概念なのに対して、ニュースリリースはもっと広く、自社サイト・SNSまで活用した社会全体への発信を意識した概念です。

ニュースリリースとプレスリリースの違い

プレスリリースもニュースリリースも、企業の情報発信である点では変わりませんが、プレスリリースはより露骨に「マスメディアに取り上げられること」が狙いです。それに対してニュースリリースは、マスメディアに対してだけではなく株主や消費者に向けた公式発信であるため、最近はプレスリリースよりもニュースリリースという言葉のほうが時代に合っているという見方もあります。しかし一般的にはプレスリリースという表現のほうが圧倒的に知名度が高く、プレスリリースとニュースリリースはだいたい似たことを意味すると覚えておいて差し支えありません。

16. 【補足】プレスリリースとは

プレスリリース(ニュースリリース)とは、企業や団体がメディアに取り上げられることを通して、企業の活動を広く一般に周知する目的で発信する公式文章です。例えば、企業が新しい製品を出したり、キャンペーンをスタートしたりしたことをテレビや雑誌などのマスメディアに向けて発信したい場合に使われます。

多くのプレスリリースは、企業の広報担当者によって作成されて、プレスリリース配信専門のオンラインサービスなどを通じて記者やメディア関係者に届けられます。リリースの内容が直接消費者に届くことはありませんが、テレビ番組の企画・新聞・雑誌などを通じて紹介されることで、広く消費者に関心を持ってもらえます。

プレスリリースとは、メディアに取り上げられることを目的に企業が発信する公式文章。

17. 【補足】プレスリリースの意義・効果

プレスリリースを出すことの意義は、企業の活動をPRし、テレビや新聞などのメディアに取り上げられることによってプロモーション効果が期待できることです。

プレスリリースの意味・効果

広報活動の大きな目的は、製品やサービスを顧客に認知させることです。個別の営業活動でリーチできる顧客数や顧客層は限られています。また自社でメディアに広告を出すと、数百万から数千万の出稿費用がかかります。そのため、メディアに取り上げられるのは費用対効果がよいプロモーション方法だと言えるのです。もちろん、マスコミに取り上げられるだけではなく、それ以外の波及効果も期待できます。

プレスリリースの意味・効果は、テレビや雑誌に取り上げられることによるプロモーションが行えること。

17-1. さまざまな波及効果・メリット

ほかにもプレスリリースの効果として、社会とよりよい接点を構築できる効果(PR=Public Relations)や、組織のモチベーションをアップする効果が期待できます。発信を機に有名メディアから取材をうけることで、社員採用の際に応募数が増加したり、社会的な信用力を向上させたりする役割もあります。広告よりも割安にプロモーションできるというだけではなく、企業の価値を高めることができるというメリットがあるのです。

プレスリリースによって期待できる波及効果の例

  • 社会との接点構築効果(Public Relationsの構築)
  • 組織のモチベーションアップ効果(社員のロイヤリティ向上)
  • 採用力の強化(自社採用の応募数向上、内定承諾率の向上)
  • IR効果(会社の時価総額向上、株主との関係性向上)
  • 社会的な信用力の獲得(サービスの優位性向上)
  • 指名検索数の増加(SEOへの好影響)

18. まとめ:魅力的で信頼できるプレスリリースを書くために

**プレスリリースの書き方をご紹介しました。プレスリリースを書く際は、「社会とどのようなインパクトを与えるか」という観点が欠かせません。一方で、会社の公式情報として出すため「正しい情報をわかりやすく書く」というスキルも必要です。単純な日本語の誤りや著作権違反、情報不足は企業の信頼に直結します。基本をおさえながら、クリアでシンプルな情報を出すことが重要です。最近は配信代行サービスやPR分析ツールを使って、効果的にPRすることを経営戦略に据える企業や団体も増えてきました。さまざまなツールを活用することで、今後のPRの形はより進歩していくのではないでしょうか。

この記事が、説得力のあるプレスリリースを書くヒントとして役立つことを願っています。

参考文献

井上岳久『実践! プレスリリース道場 完全版
野澤 直人『【小さな会社】逆襲の広報PR術
井上岳久『最強のビジネス文書 リリースの書き方・使い方
PR TIMES 企業向け管理マニュアル