テクニカルライティングとは

テクニカルライティングとは、技術文書などの執筆を行う技術です。テクニカルライティングの「テクニカル」は、「技術」や「技法」を意味します。

テクニカルライティングが対象とするのは、マニュアル、ヘルプサイトや技術ドキュメント、ソフトウェアなどのプロダクト上のテキストなどです。

テクニカルライターが作成するドキュメント

テクニカルライティングの範囲を、「科学技術文書にとどまらず、ビジネス文書、一般文書にも広がってきている」とする考え方もありますが、ここでは狭義でのテクニカルライティングに絞って取りあげます。「日本語スタイルガイド」ではテクニカルライティング技術が有効な文書や情報の例として、案内文・告知文、報告書・議事録、提案書・企画書、業務手順書・作業手順書、エンジニアリングドキュメント、説明文、レポート・小論文、講義資料、学術論文を挙げています。

テクニカルライターとは

テクニカルライティングを行う職種は、テクニカルライターと呼ばれます。業務範囲が異なりますが、会社によってはUXライターやプロダクトライターと呼ばれる場合もあります。テクニカルライターは、マニュアルを作成する企業や部門、技術開発部門に所属し、各部門と連携しながらライティングを行います。

テクニカルライティングの歴史

テクニカルライティングは、1950年頃に使われるようになった技術だと言われています。工業や科学の発達に伴い、技術的な情報や、製品の使用方法などを正確に効率的に書く技術として欠かせない存在となりました。コンピューターのハードウェア、ソフトウェアの開発によって、その必要性はさらに高まり現在に至っています。

日本におけるテクニカルライティング

欧米の理工系ではテクニカルライティングの教育が基本的な訓練として行われており、資料も豊富です。一方、日本では作文教育の一部として扱われており、欧米ほどは熱心に教育が行われていないのが現状です。

[*出典:テクニカルライティング教育におけるクラウドツール活用と相互レビューの効果分析]

テクニカルライターの重要性

ICTの発展に伴い、テクニカルライターの重要性は増していると言われています。多くのソフトウェアやハードウェアが開発される中、プロダクトのインターフェースに書かれるテキストや、ヘルプページ、マニュアルといった利用者との接点は、カスタマーサクセスの観点や、効率的なシステム開発の観点でも欠かすことのできないポイントです。

テクニカルライティングの基本的な書き方

日本語のテクニカルライティングを行う際には、簡潔で、誰が読んでも誤読しないように書きます。これからテクニカルライティングに取り組む方が特に意識したいのが、次の6つの観点です。

1. 簡潔に書く

簡潔に書くイメージ

テクニカルライティングでは無駄な表現を避けて簡潔に書きます。まわりくどい言い方や、もったいぶった表現を省いて、より短く表現することで、読み手の時間を奪わないようにします。特に意識したいのが以下の点です。

  • 同語反復を避ける。「あらかじめ予測する」ではなく「予測する」のように同じ意味の言葉は繰り返しません。
  • 動詞の名詞化を避ける。「行動をする」ではなく「行う」のように動詞は動詞のまま使います。
  • 不要な語句を消す。なくても意味が通じるまわりくどい言葉は省きます。
  • 曖昧さを無くす。「だと思う」などの曖昧な言葉は省きます。
  • 不要な強調語を削除する。「極めて」などの、なくてもよい強調語は省きます。
  • もったいぶった優雅な言い回しは避ける。「それでは詳しく見てみましょう」などのもったいぶった言い回しは省きます。

さらに詳しい情報は「簡潔に書く」でご確認いただけます。

2. 主語と述語の関係を意識する

主語と述語の関係を意識するイメージ

文の中で「何が」「どうした」を表す、主語と述語の関係に注意して文を書きます。特に意識したいのが以下の3点です。

  • 主語を明確にする。文脈上の主語が文法上の主語と一致するようにします。
  • 動詞を力強くする。能動態の構文を使うようにします。
  • 主語と述語の距離を近くする。主語と述語の間に余計な語句を入れないようにします。

さらに詳しい情報は「主語と述語の関係」でご確認いただけます。

3. 能動態と受動態を使い分ける

能動態と受動態を使い分けるイメージ

状況に応じて能動態と受動態を使い分けて書きます。原則は能動態で文章を書きながら、以下のケースでは受動態を使います。

受動態を使ったほうがよい場合

  • 誰が行っているかが重要ではない場合や、公の場合
  • 動作を受ける対象を強調したい場合
  • 能動態の主語に続けて、主語の省略をして受動態をつくる場合
  • 文体をあえて弱くしたい場合
  • 能動態が連続する場合

さらに詳しい情報は「能動態と受動態」でご確認いただけます。

4. 並列表現で文を分かりやすくする

並列表現のイメージ

何かを並べて書くときには、並列表現を取り入れて書きます。並列表現を取り入れる方法としては、以下の2つの方法があります。

  • 同じ文法構成を繰り返す
  • 箇条書きにする

さらに詳しい情報は「並列構文を使う」でご確認いただけます。

5. 「比較構文」で文をわかりやすくする

比較構文のイメージ

文章の中で、何かと何かを対比させて書くケースは多くあります。このような場合、比較対象が分かりにくいと関係性が曖昧になり、理解が難しくなります。そのため、文中で何かを比較する場合には以下の点に配慮して書きます。

  • 何と何とが比較されているのかを明確にする
  • 比較の対象を書く

さらに詳しい情報は「比較構文を使う」でご確認いただけます。

6. 「強調記号」を効果的に使う

強調記号のイメージ

文章中で言葉を強調したいときには、句読点や括弧などの記号を使って書きます。一般的な文章では強調のために「!」などを使うことがありますが、テクニカルライティングでは以下のような方法で強調を表します。

  • 読点で強調する
  • カギ括弧で強調する
  • 丸括弧で強調する

テクニカルライターのキャリア

これからテクニカルライターとして働きたいと考えている方は、資格と検定についても理解しておく必要があります。テクニカルライターの求人に応募するときには、必須スキルとして資格が求められる場合と、実務経験のみで応募できる場合があります。

資格と検定:キャリアのステップアップ

テクニカルライターに求められる資格には、以下のようなものがあります。資格が求められるケースでは「テクニカルコミュニケーション技術検定」の2級や3級が求められることが多いため、スキルを証明するためにまず候補となるのが「テクニカルコミュニケーション技術検定」です。

テクニカルコミュニケーション技術検定(テクニカルライティング試験)。実際の求人で「必須スキル」や「歓迎スキル」としてまず挙げられるのが、テクニカルコミュニケーター協会の実施する、TC技術検定です。テクニカルライターを目指す方々にとって、この検定はキャリアの基板となり、特に3級ではテクニカルライティングの基本スキルを証明することができます。

ITパスポート試験。ITに関する一定の知見があることを示す資格として歓迎スキルに位置づけられるのが、ITパスポート試験です。ITパスポート試験は経済産業省認定の国家試験で、内容は入門レベルです。

その他の専門資格。ソフトウェアや自動車など、特定分野のテクニカルライターには、その分野の専門資格が求められることもあります。

資格以外に求められる実務スキル

テクニカルライターとして働く際、資格以外に求められる実務スキルもあります。例えば以下のようなDTPやFigmaの操作技術です。ソフトウェア業界の場合には「元プログラマー」、自動車業界の場合には「元エンジニア」など、領域に応じた技術スキルが歓迎される場合もあります。

  • DTPのスキル
  • Figmaのスキル
  • ソフトウエアの開発に携わった業務経験
  • プログラミング言語に関する知識

勉強方法(資格・おすすめの本・セミナー)

これからテクニカルライターになりたい方や、テクニカルライターとしてのスキルを高めたい方の勉強方法として、把握しておきたいのが以下の書籍やセミナーです。

【基礎力強化】日本語スタイルガイド

テクニカルライティングに必須の教科書とも言えるのが、一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会の「日本語スタイルガイド」です。日本語のテクニカルライティングについて詳細にまとまっている書籍で、TC技術検定の受験対策のための必読書です。

【基礎力強化】TC技術検定受験対策セミナー

TC技術検定を受検する前に受講しておきたいセミナーが、TC技術検定受験対策セミナーです。専任講師が試験範囲の解説、ガイドブックの学習ポイント、例題、解答のコツなどを解説します。試験の範囲や学習ポイントを理解し、成功率を高めることができます(時期により開催されていない場合があります)。

【応用】NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方

NASAのテクニカルライティングについてまとめた書籍が、この「NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方」です。英語に特化した内容となりますが、日本語に通じる部分もあります。NASAのテクニカルライティング技術を学ぶことで、英語のテクニカルライティングのスキルを高め、国際的な分野での活動にも役立てることができます。

最新テクニカルライティング【AI文章校正ツールの活用で質を向上させる】

テクニカルライターの仕事をさらに効率的に進めるために、活用が広がっているのが「AI文章校正ツール」です。AI技術で従来の校正支援ツールがさらに進化し、より高い検知能力を持つツールが開発されています。

AI文章校正ツール「wordrabbit(ワードラビット)」は、一般的な誤りから複雑な構文の問題まで、瞬時に修正候補を提示します。校正作業の精度を飛躍的に向上させ、テクニカルライターの作業効率を大幅に改善します。下記の画像はwordrabbitを使用した実際の校正例です。

AI文章校正wordrabbitでい抜き言葉を発見する画面

AI校正ツールの利点:正確性向上と時間短縮

確認を始めるには、次の画像のように文章を画面上に貼り付けるだけです。

実際の修正例

細かい修正理由を確認したうえで、修正を反映するかしないかを選択することができます。修正はワンクリックで可能。従来のツールでは見逃されがちな細かな誤りも見逃さず、校正作業の精度を向上させることができます。

実際の改善例

wordrabbitはSaaS型サービスとして提供されているため、高額な初期投資を必要とせず、常に最新のAI技術を利用できます。そのため、コストパフォーマンスに優れた、最先端の校正ツールが手軽に活用可能です。このように、wordrabbitは、テクニカルライティングの精度と効率を同時に高める強力なサポートツールです。

テクニカルライターとしての転職戦略

テクニカルライターとしての転職を考えている場合、「テクニカルライター」以外にも「UXライター」という職種で募集があるケースもあります。

UXライターとテクニカルライターの境界は厳密には曖昧ですが、UXライターを採用する多くの企業では、ソフトウェアのインターフェイスに書くテキストのライティングが行える人材を求めており、それは一部のテクニカルライターの業務内容と一致します。

まとめ:テクニカルライティングのこれからとAIツールの役割

テクニカルライティングを極めるうえで理解しておきたい内容や、スキルアップのための勉強方法を取りあげました。

AIの進化は、テクニカルライターやUXライターの仕事を変革し、より効率的かつ質の高い成果物の作成を可能にしています。「テクニカルライターやUXライターの仕事がAIによってなくなるのではないか」と懸念する声もありますが、「どのような内容を書くべきか」といった正確な判断は現在のところ人間にしか担えない業務です。

このような最新のツールを業務に取り入れることによって、より効率的に業務を進めながら、テクニカルライターは独自の価値を最大限に発揮できるようになります。