助詞の使い方

助詞・助動詞は決まった使い方を崩さないように使います。日本語は書き手の心情を表す言葉が発達していて、とくに助詞・助動詞にその特徴が顕著に現れると言われています[*参考]。助詞・助動詞の種類は多岐にわたり、心情にあった助詞助動詞の使用によって、奥深い表現ができます。しかし、その豊富な種類が原因となって、見分けがつかなかったり読みにくさにつながったりする場合があります。そこで、誤った使い方をしないように注意する必要があります。

間違いやすい助詞・助動詞として、以下の6つがあげられます[*参考]

間違いやすい助詞・助動詞

  1. 起点の「より」
  2. 並列の「と」
  3. 並列の「たり」
  4. とりたて型の「も」
  5. 推量の「う」

1. 起点の意味の「より」は「から」に言い換える

起点を示す助詞は「より」ではなく「から」を使います。「より」は「時・起点」「比較」の2つの意味を持つ助動詞のため、「起点」と「比較」とで誤読が起きます。そのため起点は「から」に任せて、「より」は、「花より団子」のように比較の時にだけ使います。例えば「東京より参りました」ではなく「東京から参りました」と書きます。

比較の「より」

梨より桃が好き(比較)

起点の「より」

東京より参りました(起点)

東京から参りました

「より」を「から」に言い換えます。

2. 並列の「と」を省略しないケース

「AとB"と"の比較」という2番目の「と」は、会話では省略されることがありますが、文中で、比較対象が曖昧になる場合は省略を避けます。日本の公文書の指針となっている内閣通知では、省略して比較対象が曖昧になるときには、「と」を省略せずに書くようにと指摘されています[*出典]

港区と大阪の栄市の比較

港区と大阪の栄市の比較

悪い例では、港区とどこが比較されているか曖昧ですが、「と」を入れることで「港区」と「大阪の栄市」とが比較されていると明示できます。

3. 並列の 「たり」は連続させる

「歩いたり走ったり」のように「たり」を使って複数の概念を並べる場合には、2つ目の「たり」を省略しません。特に、並べる文章が長い場合には「たり」を省略しがちですが、並列させる概念が曖昧になるため、省いてはいけません。

夏休みは実家に帰ってゆっくり家族との時間を楽しんだり、ひたすら趣味の読書に没頭するのがよい

夏休みは実家に帰ってゆっくり家族との時間を楽しんだり、ひたすら趣味の読書に没頭したりするのがよい

2つ目の「たり」は省略できません。

4. とりたて型の「も」は意図が伝わる場合にだけ使う

「も」を使用する場合は、「も」の背景が読者に伝わるように使う必要があります。助詞「も」には、読者に対して内容を暗示する効果があります。これを「とりたて助詞」と言います。「とりたて助詞」とは、話し手の心情を暗示する表現で、言葉以上の意味を持たせることができる表現方法です。たとえば「おばあさん"も"川へ行った」と表現することで、読み手には、おじいさんも川へ行ったのだろうということが暗示されます。

ここで注意すべきなのが、「も」を使うことで、漠然とした背景を表現できるからといって、内容がまとまっていないにも関わらず、無意識に「も」を使わないようにするということです。なぜなら、書き手の頭の中では暗示ができていても、読み手には情報が足りず暗示が伝わらないことがあるためです。特に「も」は書き手が内容に自信がない時などに使いがちな表現です。「とりたて助詞」の「も」を使い方を使う際には、暗示される内容を明確にして使用ます。

弟が姉のお菓子も食べた。(食いしん坊だなという書き手の心情を言葉に込めている)

5. 推量の「う」は「だろう」に言い換える

「間違い無いと言えよう」のような推量の「う」は、「だろう」に置き換えます。「う」は〜しようという意思をあらわす場合にだけ使用します。助詞の「う」には「意思」と「推量」の2つの意味があるため、どちらの意味か判別がつかず誤読が起きやすいためです。[*出典]

意思

ゲームで遊ぼ(意思)

推量

間違いないと言えよ(推量)

間違いないだろう

「う」を「だろう」に言い換えます。

[出典]
内閣通知『公用文作成の要領』1952
[参考]
森田良行『助詞・助動詞の辞典』東京堂出版、2007