漢字とひらがなを使い分ける
日本語の文章を書くときには、漢字とひらがなを使い分けて書きます。漢字は常用漢字表にある範囲で使用します。常用漢字表にない字はひらがなで書きます。常用漢字表に存在していても、漢字本来の意味が薄れた字などは、ひらがなで書きます。
漢字とひらがなの使い分けルール
- 漢字は、固有名詞などを除いて常用漢字表にある漢字を使う
- 常用漢字表にない字は、ひらがなを使う
- 常用漢字表に存在しても、漢字本来の意味が薄れた語などは、ひらがなを使う
常用漢字とは
常用漢字とは、「法令、公⽤⽂書、新聞、雑誌、放送など、⼀般の社会⽣活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すもの」として、内閣告示によって定められた漢字です。2010年に告示された、常用漢字表は2136字で構成されています。
1. 常用漢字を使う
漢字は、難しい漢字の利用を避けて、常用漢字を使用します。これは、名詞や動詞などすべての品詞で共通です。常用漢字表にない字は、訓読みの場合にはひらがなで書きます。音読みの漢語の場合には別の表現に言い換えるか、読み仮名をつけます。
訓読みとは、漢字に日本語をあてて読むことです。例えば「春(はる)」は訓読みです。音読みとは中国からきた発音をもとに読むことです。例えば「春分(しゅんぶん)」は音読みです。
常用漢字外(表外字)を使わない
常用漢字外(表外字)とは、常用漢字表に存在しない字のことです。例えば、「薔薇」「飴」「濡」は常用漢字表にない表外字です。表外字は、原則として使用せず、ひらがなで書いたり、読み仮名をつけたり、別の語に言い換えたりして書きます。
表外読み(表外音訓)音訓
表外読み(表外音訓)とは、常用漢字表で定められていない読みのことです。常用漢字表に存在する漢字でも、読み方が書かれていない場合は、表外読みの漢字となります。表外読みの字は、原則として使用せず、ひらがなで書いたり、読み仮名をつけたり、別の語に言い換えたりして書きます。例えば、活きる(「活」は常用漢字表に存在するが、「イ」の読みは定義されておらず「カツ」の読みのみ定義されている。)、徒らに(「徒」は常用漢字表に存在するが、「イタズラ」の読みは定義されておらず「ト」の読みのみ定義されている。)が表外読みの言葉です。
常用漢字外や表外読みでもそのまま使用する場合
常用漢字外や表外読みでも、固有名詞や専門用語の場合には、例外的にそのまま使用します。例えば、地名である「鐺山(「鐺」が常用漢字外)」、人名である「宮崎駿(「駿」が常用漢字外)」は、そのまま使用します。難読だと判断される場合には、読み仮名をつける場合があります。
常用漢字以外でもそのまま使用する場合
- 固有名詞(例:人名、地名)
- 専門用語または特殊用語(例:試薬撹拌機)
新聞社においては、特定の文字に関して、常用漢字表にはないが使うと定めています。例えば、共同通信社では常用漢字表にはない「磯」「炒」などを使用するとしています。一方、常用漢字表には存在するが使用しないと定める字もあります。例えば毎日新聞社では「但」「朕」などの字を使用しないとしています。
読み仮名は「ルビで示す方法」と、「該当する語の後ろにカッコ内で読み方を示す方法」があります。ルビを付ける際には、熟語すべてにルビを振ります。これを「総ルビ」といいます。例えば、「無花果(いちじく)」のような形です。出版物や新聞においては、「総ルビ」を使いますが、政府や自治体が書く文章である「公用文」では常用漢字表にない漢字の部分だけにルビを付けます。これを「パラルビ」といいます。出版物や新聞のルールでは、読み仮名は2回目から省略します。
2. 「ひらく」「とじる」のルールを統一する
常用漢字表に存在する字でも、ひらがなで書く場合があります。出版物や新聞、ビジネス文章においては、どの字を漢字で書いて、どの字をひらがなで書くのかを一定の方針にのっとって定めています。
「ひらく」「とじる」とは
「ひらく」とは、漢字で表現できる語をひらがなで書くことをいいます。一方「とじる」とは漢字で表現できる語をそのまま漢字で書くことをいいます。「ひらく」ことによってやさしく読みやすい雰囲気となり、「とじる」ことで固く厳格な雰囲気となります。
ひらいて書く語
出版・新聞などのルールにのっとった場合、形式名詞・補助動詞・補助形容詞といった、本来の意味を失った字や、当て字、接続詞などの一部、擬態語はひらがなで書きます。
1. 本来の意味を失った語、補助的に使われる語
形式名詞。 形式名詞はひらがなで書きます。形式名詞とは「いただく」「そのため」など、本来の意味を失っている名詞のことを言います。
「(みた)ところ(本来の場所の意味で「所」を使う場合には漢字で書く)」、「(その)とき(本来の時間の意味で「時」を使う場合には漢字で書く)」「見たところ(本来の場所の意味で「所」を使う場合には漢字で書く)」
補助動詞・補助形容詞。 補助動詞や補助形容詞はひらがなで書きます。補助動詞・補助形容詞も、本来の意味を失った語です。
「(調べて)みる(本来の意味で「見る」を使う場合には漢字で書く)」、「(行って)くる(本来の意味で「来る」を使う場合には漢字で書く)」、「(行きたく)ない(本来の意味で「無い」を使う場合には漢字で書く)」
助詞。補助的に使われる助詞は、原則としてひらがなで書きます。
「まで」、「ところ」、「ぐらい」
助動詞。補助的に使われる助動詞は、原則としてひらがなで書きます。
「ようだ」、「ごとき」、「べきだ」
2. 当て字
当て字。当て字はひらがなで書きます。当て字とは、漢字の持つ本来の意味にかかわらず、漢字の音を当てて読む字です。
「御座居ます」、「野暮」、「目出度」、「出鱈目」
3. 接続詞などの一部
接続詞。一部の接続詞はひらがなで書きます。
「ただし」、「または」、「および」、「かつ」
代名詞。 一部の代名詞はひらがなで書きます。代名詞とは、名詞の代わりに用いる「あなた」「これ」などの語です。一方、「私」「僕」などは代名詞でも漢字のまま書きます。
「あなた」、「われわれ」、「ここ」、「そこ」
連体詞。一部の連体詞はひらがなで書きます。
「この」、「その」、「わが」、「あらゆる」
感動詞。一部の感動詞はひらがなで書きます。感動詞はカタカナで書く場合もあります。
「ああ」、「あら」、「おや」
副詞。訓読みの副詞はひらがなで書きます。漢字のまま書く場合もあります。
「ほそぼそ」、「あくまで」、「かえって」
4. 擬態語
擬態語。擬態語はひらがなで書きます。擬態語とは見た感覚や触った感覚での印象を表した語です。カタカナで書く場合もあります。
「ごたごた」、「ゆったり」