「さ入れ言葉」とは

「さ入れ言葉」とは、使役の意味の助動詞である「せる」を使う場面で、誤って「させる」を使う表現です。例えば、本来は「読ませる」でよいところを、以下の例のように「読まさせる」とするのが「さ入れ言葉」です。

可能の意味を表す「られる」から「ら」が省略される「ら抜き言葉」に対して、本来必要でない箇所に「さ」が加わることから「さ入れ言葉」と呼ばれています

本を読ませる。(さ入れ言葉)

本を読ませる。

「さ入れ言葉」の文法的な意味

使役の意味を持つ助動詞である「せる」「させる」は、直前の動詞によって、どちらを使用するのかが決まります

本来は以下の例のように、直前の動詞が五段・サ変活用動詞の場合は「せる」を使います。一方で、上一段・下一段動詞の場合には「させる」を使います。

  • 送らせる(五段動詞「送る」に助動詞「せる」を加えた言い方)
  • せる(サ変活用動詞「する」に助動詞「せる」を加えた言い方)
  • させる(上一段動詞「着る」に助動詞「させる」を加えた言い方)
  • 食べさせる(下一段動詞「食べる」に助動詞「させる」を加えた言い方)

しかし、このような本来の形に対して、五段・サ変活用動詞に「せる」ではなく「させる」を付けて「送らさせる」のようにすることが原因で発生するのが、さ入れ表現です

「さ入れ言葉」はマナー違反なのか?文化庁の調査より

「さ入れ言葉」は日常会話ではよく見られますが、マナー違反なのでしょうか?

文化庁の調査で「さ入れ言葉」は、約1〜3割が使用している表現であることが明らかになっています。例えば、本来は「絵を見せてください」とするところを「絵を見せてください」とする人は28.8%にのぼり、3人に1人は違和感を持たずに「さ入れ言葉」を使っている計算となります。

出典:文化庁「令和2年度『国語に関する世論調査』

このように「さ入れ言葉」を使っている人は一定数存在します。一方で、「気持ち悪い」「日本語の乱れだ」という声もあります。文法的には誤りであり、不快感を感じる人もいることから、ビジネスマナー上は、使わない方がよいと言えます。

「さ入れ言葉」の例

「さ入れ言葉」としてよく見られるものは、大きく3種類に分類することができます。

1. 五段動詞に誤って「させる」を付ける場合

1つ目は、五段活用をする動詞に、本来の「せる」ではなく「させる」を付ける例です。

「書かせる」を「書かせる」とするなど、以下の例のように余分な「さ」が加わっています。

さ入れ言葉の例 修正例
書かせる 書かせる
読ませる 読ませる
聞かせる 聞かせる
遊ばせる 遊ばせる

2. 「〜せていただく」に不要な「さ」が入る場合

2つ目は、「せる」「させる」を丁寧な形にする際に、本来は「〜せていただく」でよいところを「〜せていただく」とする例です。

例えば、五段動詞の「休む」を「〜せていただく」という形にするには助動詞の「せる」を付けるため「休ませていただきます」で十分です。

しかし、「させていただく」という言い方を固定的に捉えてそのまま動詞に付けてしまうことで「休まさせていただく」という、さ入れの表現となります。

さ入れ言葉の例 修正例
休ませていただきます 休ませていただきます
帰らせていただきます 帰らせていただきます
せてください 見せてください
書かせていただきます 書かせていただきます
読ませてください 読ませてください

※「〜させてもらう」も同様のルールでさ入れ言葉になります。

3. 「〜すぎる」に不要な「さ」が入る場合

3つ目は、形容詞に対して、程度を超える意味で「〜すぎる」を付ける際、誤って「さ」を加える例です。

例えば「少ない」という形容詞に「〜すぎる」を付けるときには「少な過ぎる」が文法上正しい形ですが、ここに誤って「さ」を入れることで「少なすぎる」という、さ入れが発生します。

さ入れ言葉の例 修正例
少なすぎる 少なすぎる
はかなすぎる はかなすぎる
くだらなすぎる くだらなすぎる
なさけなすぎる なさけなすぎる

このような誤りが発生する背景には、形容詞の「ない」の持つ複雑さが関連していると考えられます。

例えば、「良い」「濃い」といった形容詞に「〜すぎる」を付けると、「良すぎる(語幹の「良」に「すぎる」が付いた形)」「濃すぎる(語幹の「濃」に「すぎる」が付いた形)」となります。一方、この「語幹+すぎる」というルールで形容詞の「ない」に「〜すぎる」を付けると「なすぎる」となり、意味が分かりにくくなります。そこで「なすぎる」という形にすることが慣用的になっていると考えられます。

このような前提に立ったうえで、誤認識の原因となると考えられるのが、「少ない」のように「ない」という音を内包する形容詞です。「ない」と「少ない」は一部の音が似通っていますが、実際には全く異なるもので、「少ない」には「無い」の意味はありません。しかし、音が似ているために、本来は「少なすぎる」でよいところを「なすぎる」と同様に「さ」を入れて「少なすぎる」としてしまうのではないかと考えられます。

「ら抜き言葉」や「れ足す言葉」との違い

「さ入れ言葉」と似たものとして、「ら抜き言葉」や「れ足す言葉」などがあります。いずれも話しことばではよく使われる表現ですが、ビジネス文章などの書きことばでは違和感が強く、使用は避けた方がよいでしょう。

「ら抜き言葉」とは

ら抜き言葉」は、可能の意味の「られる」から「ら」が省略された表現です。

「ら抜き言葉」の例

ら抜き言葉 本来の表現
見れる 見られる
着れる 着られる
寝れる 寝られる

「れ足す言葉」

「れ足す言葉」は、本来必要のない箇所に「れ」を加えた表現です。

「れ足す言葉」の例

れ足す言葉 本来の表現
フランス語も読め フランス語も読める
きれいな文字が書け きれいな文字が書ける
攻撃を防げ 攻撃を防げる

「さ入れ言葉」の見分け方

誤って「さ入れ言葉」を使っていないかどうかを見分けるためには、「させる」の前の動詞の活用形を見る方法があります。

五段動詞である「読まさせる」を例にとって考えると、「させる」の前の「読ま」は未然形です。未然形の場合「させる」ではなく「せる」を付けるため、この場合は「読ませる」が正しい形であることが分かります。

読ませる。(五段動詞の未然形+「させる」)

本を読ませる。(五段動詞の未然形+「せる」)

6. 「さ入れ言葉」は「AI文章校正ツール」で修正できる

書くことに苦手意識があったり、日本語を学習中であったりする場合、「さ入れ言葉」を十分に理解するのは簡単ではありません。また、書いた文章をチェックする際、長い文章の中から「さ入れ言葉」を探し出すのには手間がかかります。

そこで活用できるのが、AI文章校正ツールの「wordrabbit(ワードラビット)」です。wordrabbitを使うことで、「さ入れ言葉」などの文法の誤りを即座に検出し、修正案を提示します

下記の画像は、wordrabbitを用いて「さ入れ言葉」を添削している実例です。

AI文章校正wordrabbitでさ入れ言葉を修正する画面

7. AI校正ツールの利点:正確性向上と時間短縮

添削を始めるには、次の画像のように画面上に文章を書くだけです。文章を入力すると即座に、「さ入れ言葉」を見つけ出します

実際の修正例

誤りを検知するだけではなく、詳細な修正理由も確認することが可能です。児童や日本語を母国語としない方が、書き方を学ぶようなシーンでも、リアルタイムに学習しながら、適切な文章を効率的に書くことができます

実際の修正理由

wordrabbitはSaaS型サービスとして提供されているため、高額な初期投資を必要とせず、常に最新のAI技術を利用できるメリットもあります。そのため、コストパフォーマンスに優れた、最先端の校正ツールが手軽に活用可能です。このように、wordrabbitは長すぎて読みにくくなっている文章を瞬時に修正し、質の高い文章を短時間で作成するための強力なサポートツールとなります。

まとめ:「さ入れ言葉」を理解して文章力を向上させる

使役の意味の助動詞を付ける際に本来の「せる」ではなく「させる」を付けた言い方である「さ入れ言葉」について解説しました。「読ませる」「休ませていただく」のような、さ入れ表現はは文法的には誤りのため、特にビジネスシーンや、書きことばでは使用しない方がよいでしょう。

多忙なビジネスシーンや、日本語の教育において、「さ入れ言葉」などの文法の誤りを修正したり指導したりするには、AI文章校正「wordrabbit」を使った添削が有効です。単なる誤字脱字のチェックだけではなく、文体の統一やビジネス用語の適切な使用を支援し、文書全体の印象を向上させることができます。ビジネス文書の品質を次のレベルに引き上げるために、AI校正ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事が、皆様の文章作成、ひいては日常のビジネスコミュニケーションにおいてヒントとなれば幸いです。文章は、あなたの考えを世界に伝える力強い手段です。必要に応じてwordrabbitを活用して、その力を最大限に引き出しましょう。