1. 結局、1文は何文字以内で書けばよいのか

実用的な文章では、明確な基準はないものの強いて言うならば1文あたり80文字以内くらいを目安に考えるのがよいと言えます。では、なぜ80文字を目安とするのがよいのでしょうか?

文を短く書くか、長くかといった問題にはいくつもの説や議論があります。なぜ80文字が目安なのか、まずは背景や理由をできるだけ分かりやすく解説します。

2. 文の長さには賛否両論ある

日本語の文章については「短くするべき」という主張も、「必ずしも短くする必要はない」という主張もあります

2-1. 「文は短くするべき」という主張

「文は短くするべき」という主張は、遅くとも昭和時代から行われています。文章術の御三家とも言われる清水幾太郎は、「短い文を積み上げた方がよい」と指摘しています。
[*出典:清水幾太郎「論文の書き方(1959)」]

では、何文字くらいに短くするのがよいと言われているのでしょうか。文字数を定義しているものとしては以下が挙げられます。

1文の文字数 対象の文章 出典
24文字 弘前大学社会言語学研究室「『やさしい日本語』作成のためのガイドライン 」 日本語を母国語としない人に向けた文章
平均30文字 中村明『名文作法』 -
30〜35文字 辰濃和男『文章の書き方』 -
40〜50文字以下 安本美典『説得の文章術』 -
50〜60文字 荒瀬康司『科学論文作成上のルール』 論文
50~60文字 文化審議会国語分科会「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」 公用文

2-2. 「必ずしも短くする必要はない」という主張

一方で、文は必ずしも短くする必要はないという意見もあります

要旨 出典
短いほうがよいとはかぎらず、適度な長さであることが大事 石黒圭「ていねいな文章大全(2023)」
短文のすすめは長文の排除でもあるので抑圧的な感じがする 斎藤美奈子「文章読本さん江(2007)」

例えば、作家の谷崎潤一郎の文章は1文が200文字を超えるものも多くありますが、高い評価を受け、外国語にも翻訳されています。作家の文の長さは文体とも言えるため、一律に長文を排除するのは乱暴とも受け取れます。

ただし、注意しないといけないのが「長い文の方がよい」「文は長く書け」と言っているわけではないということです。長い文は以下のような問題が発生しやすいためです。

3. 長くて分かりにくい文の3つの問題点

長い文が分かりにくいと言われるのには理由があります。それは、長い文章では、次に挙げるような「主語・述語の対応が分かりにくい」「論理接続がねじれている」「文の構造を把握しにくい」といったケースが発生しやすいためです

3-1. 主語・述語の対応が分かりにくくなる

主語述語が対応していないと、文は分かりにくくなります

例えば以下の文章では、「弊社のデジタル戦略は」という主語が「思っています」という述語につながっておらず、文の意味が把握しにくくなっています。

弊社のデジタル戦略は顧客と採用者の面談機会をいかに創出するかという点に重きを置き、対面でのコミュニケーションを重視しつつ、ツールの一つとして当社のサービスを活用してほしいと思っています

そこで、文を分割するとともに主語を加えることによって、以下のように意味が通るように修正することができます。

弊社のデジタル戦略は顧客と採用者の面談機会をいかに創出するかという点に重きを置いていますそこで我々は対面でのコミュニケーションを重視しつつ、ツールの一つとして当社のサービスを活用してほしいと思っています

3-2. 論理接続がねじれる

論理接続がねじれている文も意味が把握しにくくなります。論理接続のねじれとは、1文の中に「〜ので」「〜から」などの接続が複数箇所含まれることによって、論理展開が分からなくなっている状態です

例えば、以下の文章には「ため」が2回出てきます。初めの「多いため」は述語の「見込んでいます」につながっているようにも見えますし、「合致するために」につながっているようにも見えます。

ミストの修理を依頼したいタイミングは、購入日から7日以内と回答した人が8割と多いため、この新機能の導入により、積極的に働きたい事業者と当日や翌日など直近で修理を依頼したいユーザーのニーズが合致するために、依頼件数の増加も見込んでいます

そこで以下のように短い文に分けて接続すると、論理関係が明確になります。

ミストの修理を依頼したいタイミングは、購入日から7日以内と回答した人が8割と多くいます。ここから分かるのは、この新機能の導入により、積極的に働きたい事業者と当日や翌日など直近で修理を依頼したいユーザーの業務ニーズが合致するということですそのため依頼件数の増加も見込んでいます。

3-3. 文の構造が把握しにくくなる

文が長くなることによって、読み手が文の構造を把握しにくくなる問題があります。その背景には、日本語特有の「語順」があります。日本語は、述語が必ず最後に来る言語です。読み手は文の最後までじっと待たないと、言葉の意味が何なのか、何が言いたいのか、否定なのか肯定なのか分かりません

例えば、以下の例では「人口が減少したというのも」という部分が、「古いままであるため」に続くようにも「課題と一致する」に続くようにも受け取れます。さらに「課題と一致する」という部分は「政治が〜課題と一致する」ととらえることもできます。

人口が減少したというのも、教育制度や社会システムが変化することなく古いままであるため、政治が新しい世代のニーズに応えられていないという問題があり、今まで抱えていた課題と一致する

このように長すぎる文章では、読み手は文の終わりまでいくつもの情報を記憶しておく必要があります。多くの場合、記憶しておくことは難しいため、文を何度も読み直すことになるのです

そこで以下のように短い文を接続詞でつなぎます。すると、読み手は話の大筋をつかめるようになります。

教育制度や社会システムが変化することなく古いままであるため、政治が新しい世代のニーズに応えられていないという問題がある。そう考えると、人口が減少したというのも、今まで抱えていた課題と一致する。

人口が減少したというのも、教育制度や社会システムが変化することなく古いままであるため、政治が新しい世代のニーズに応えられていないという問題がある。これは政府が今まで抱えていた課題と一致する。

この現象を清水幾太郎は、「多くの外国語では、一番大切な単語即ち主語と動詞とが最初に現れて、それで話の中心というか、大筋というか、それが直ぐ判ってしまうのに、日本語では、主語が頻繁に省略される上、動詞は最後でなければ現れてこない。その間、話を聞く方は中ぶらりんの状態にいる。何も決まらない、何処へ行くのか、否定なのか、肯定なのか、イライラしながら、待っていなければならない」と表現しています。

4. 実際には、長くても読みやすい文はある

さまざまな主張や原則を取りあげてきました。しかし以下のように「長くなっても仕方のない文」や「長くても読みやすい文」は存在します

4-1. 「長くて分かりにくい文の3つの原則」に当てはまらない文

上記で挙げた、「主語・述語の対応が分かりにくい」「論理接続がねじれている」「文の構造を把握しにくい」の3つに当てはまらない文は、長くても分かりにくさはありません

例えば、以下の文は126文字ありますが、例外はあれども、分かりにくいと感じる方は比較的少ないのではないでしょうか。それは1文の中に順接・逆接・対比・列挙などの論理が複数入り乱れておらず、主語・述語も丁寧に書かれているためです。

会社と乗客との間になにかイザコザが起きたとき、料金の払いもどしなどで会社が損をしないようにいろいろズルイことを決めておき、しかも乗客にわざとわからないように書いて、いざというとき「書いてある」と主張するためには、これはたいへん"すぐれた"文章であろう。(本多勝一「新版 日本語の作文技術(2015)」)

4-2. 引用や長い固有名詞のある文

他にも、文の中に引用箇所があったり、長い固有名詞が含まれていたりする場合にも、一文は長くなります

アンケートでは「自分は将来何になりたいのかを考えるきっかけとなった」「夢を叶えるためにはどれくらいの勉強が必要なのかが分かった」「目標を定めてがんばっていきたい」といった意見が大半を占めたことからも、有意義な授業であったことが見て取れる。

このような場合も、文字数が一定量を超えたからといって、機械的に「分かりにくい文だ」と言うことはできません。

5. 1文の目安は「概ね80文字以内くらい」だと言える

ここまでご紹介したように、長すぎる文は読み手を混乱させるため避けた方がよいと言えます。一方で、必ず短い文を何度も繰り返せばよいと言い切ることもできません。実際に、長い文でも読みやすい文は存在します。

しかし、文の構造が複雑で、「〜ので」「〜から」などが何度も含まれている文は、読み手に分かりにくい印象を与えます。こうした文章は「結果的に」文字数が多いケースが頻繁に見られます

では長くて複雑な文章を見分けるとして、何を指標にしたらよいのか。誰にでも分かりやすく一定の指標となるものが文字数です。30万文字を分析した結果、100文字を超えてくると意味が把握できない文章が増加することが分かりました。

さらに、誰にでも分かりやすい文章の代表として、新聞コーパスの文章を100万文分析した結果、100文字を超える文は全体の約2.5%、80文字を超える文は約8%でした。つまり、92%の文章は80文字以内で書かれていることが分かります

1文の文字数(新聞の文章)

文字数 割合
0〜9文字 0.04%
10〜19文字 5.29%
20〜29文字 16.04%
30〜39文字 20.61%
40〜49文字 19.11%
50〜59文字 14.72%
60〜69文字 9.93%
70〜79文字 6.15%
80〜89文字 3.61%
90〜99文字 2.04%
100〜110文字 1.14%
110〜119文字 0.63%
120〜129文字 0.35%
130〜139文字 0.19%
140〜149文字 0.1%
150〜169文字 0.05%

一方で、「1文は60文字以内」としてしまうと、約25%もの文章がこのラインに引っかかってしまうこととなり、あまり現実的とは言えなさそうです。

ここから、文字数に厳格になりすぎずも、80文字以内くらいを目安にしながら、100文字を超えるような場合には「分かりにくい構造を見過ごしていないか」といった視点で文の分割を検討するのがよいと考えられます

6. 長くて複雑な文は「AI文章校正ツール」で分割できる

人に情報を伝達するための文章では、長い文を避け、複雑さを回避することで、より多くの人に理解してもらえる文を書くことができます。しかし、自分で書いた文のすべてに対して、複雑な文になっていないかどうかをチェックするのは簡単ではありません。

そこで活用できるのが、AI文章校正ツールの「wordrabbit(ワードラビット)」です。wordrabbitを使うことで、構造が複雑になっている文を即座に検出し、修正案を提示します。これまでの文章校正ツールと異なり、長すぎる文や複雑すぎる文を、指摘するだけではなく修正まで自動的に行うことができます

下記の画像は、wordrabbitを用いて長すぎる文を添削している実例です。

AI文章校正wordrabbitで長すぎる文を発見する画面

7. AI校正ツールの利点:正確性向上と時間短縮

添削を始めるには、次の画像のように文章を画面上に貼り付けるだけです。文章を入力すると即座に、長すぎる文や複雑すぎる文が検知されます

wordrabbitは、長すぎる文に加えて複雑な文を分割することもできます。それは、文と文の接続関係を把握し、1文の中に複数の論理関係が含まれている場合に、論理関係を絞って明確にすることができるためです

以下の例では「ありますが」という前提と、「満たされていれば」という例示が同時に1文中に存在していることによって、意味が把握しにくくなっています。このような文章をwordrabbitに入力すると、文を切り離して自動的に論理関係を明確にすることができます。

実際の修正例

誤りを検知するだけではなく、詳細な修正理由も確認することが可能です。人の目による添削では見逃されがちな細かな誤りも見逃さず、文章力を向上させることができます。

実際の改善例

wordrabbitはSaaS型サービスとして提供されているため、高額な初期投資を必要とせず、常に最新のAI技術を利用できるメリットもあります。そのため、コストパフォーマンスに優れた、最先端の校正ツールが手軽に活用可能です。このように、wordrabbitは長すぎて読みにくくなっている文章を瞬時に修正し、質の高い文章を短時間で作成するための強力なサポートツールとなります。

8. まとめ:文字数に注目して分かりにくい文を修正する

1文は何文字以内で書いたらよいのか、その背景や理由を含めて幅広く解説しました。特に社会人の皆さんにとって、分かりやすい文章を書くことは必須スキルとも言えます。

文章力に自信がない方でも、適切なツールを使えば、効率的にスキルアップすることができます。この記事が、皆様の文章作成、ひいては日常のビジネスコミュニケーションにおいてヒントとなれば幸いです。文章は、あなたの考えを世界に伝える力強い手段です。必要に応じてwordrabbitを活用して、その力を最大限に引き出しましょう。