「ら抜き言葉」とは
「ら抜き言葉」とは、可能の意味の「られる」から「ら」を省略する表現を意味します。たとえば「見られる」「来られる」から「ら」を抜くことで、「見れる」「来れる」のような「ら抜き言葉」に変化します。
「ら抜き言葉」は昭和初期頃から広がってきた言葉だと言われています。地域や年齢によって利用率が異なり、調査においては若者を中心に使用されている「若者言葉」だとされています。
この「ら抜き言葉」は、文法上は正しくないと言われています。しかし平成27年の文化庁の調査では、「見られる」「出られる」などの言葉では、「ら抜き言葉」を使う人が、本来の言葉を使う人の割合を上回り多数派になっています。言語は常に変化していくものだという考えから、言語の「乱れ」ではなく「変化」として定着しつつあるとも言えます。
出典:文化庁『平成 27 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』
「ら抜き言葉」のよくある例
「ら抜き言葉」の例としては、「食べれる」などがあります。本来含まれているべき「ら」が抜けています。
「ら抜き言葉」の例
- あの建物で見れるよ(「見られる」が正しい)
- 辛いものも食べれる(「食べられる」が正しい)
- こっちに来れる(「来られる」が正しい)
- 服を着れる(「着られる」が正しい)
- 朝早くても起きれるよ(「起きられる」が正しい)
- なんでも自分で決めれる(「決められる」が正しい)
なぜ「ら抜き言葉」が起きるのか
「ら抜き言葉」の原因は、本来「られる」をつけて可能の意味をあらわす種類の動詞に、誤って「れる」をつけることです。「〜できる」という可能の意味をあらわしたい際、動詞の種類によってうしろに「れる」をつけるのか「られる」をつけるのかは異なります。この選択を誤ることで、「ら抜き言葉」が発生すると言われています。例えば「見る」を可能表現にするには「られる」をつけて「見られる」とするのが本来の形ですが、誤って「れる」をつけると「見れる」という「ら抜き言葉」の形になります。
「られる」をつけるべき際に「れる」をつけてしまう背景として、「られる」が持つ、受け身・可能・尊敬の意味を区別しやすくするためだという指摘がされています。例えば「先生が見られる」を「先生が見れる」とら抜きにすることで、可能の意味であることがより明確になります。
可能の意味をあらわす時に「れる」をつける動詞と、「られる」をつける動詞がある
可能の意味をあらわしたい時に「れる」をつけるのか「られる」をつけるのかは、「れる」や「られる」を接続させる動詞の種類によって異なります。五段活用の動詞の場合には「れる」を、一段活用やカ行変格活用の動詞の場合には「られる」をつけます。
活用の見分け方
五段・上一段・下一段を見分けるには、「〜ない」をつけて直前の音の段を見ます。
- ア段の音+ない:五段活用
- イ段の音+ない:上一段活用
- エ段の音+ない:下一段活用
※補足:上一段と下一段は、ウを中心にイは上にあるので上一段、エは下にあるので下一段という名前がついています。
「れる」をつけて可能の意味をあらわすのは、五段活用の動詞
語幹に「れる」をつけて可能の意味をあらわすのは、五段活用の動詞です。これを可能動詞と呼びます。五段活用とは、後ろに「ない」をつけて未然形の形にした時に、「ない」の直前がア段の動詞です。たとえば「書く」を可能の意味にした「書ける(書く+れる)」、「遊ぶ」を可能の意味にした「遊べる(遊ぶ+れる)」などが、「れる」をつける動詞です。
五段活用の動詞+「れる」の例(可能動詞)
- 書ける(書く+れる)
- 遊べる(遊ぶ+れる)
- 読める(読む+れる)
- 歩ける(歩く+れる)
- 泳げる(泳ぐ+れる)
「られる」をつけて可能の意味をあらわすのは、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用の動詞
「られる」をつけて可能の意味をあらわす言葉には、上一段活用・下一段活用の動詞と、「来る」の3種類があります。上一段活用とは、後ろに「ない」をつけて未然形の形にした際にイ段で終わる言葉。下一段活用はエ段で終わる言葉です。カ行変格活用の動詞は「来る」だけです。たとえば、「食べる(下一段活用)」「起きる(上一段活用)」を可能の形にする場合には、「食べる」の語幹「食べ」に「られる」をつけて「食べられる」となり、「起きる」の語幹の「起き」に「られる」をつけて「起きられる」となります。
国語文法では、上一段活用、下一段活用の二つに分けて考えますが、日本語文法では、両方をあわせて一段活用と考えます。日本語文法で考えた場合、「一段活用」と「来る」だけが「られる」を伴う言葉であるため、よりシンプルに理解することができます。
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上一段・下一段・カ行変格の動詞+「られる」の例
- 下一段活用の動詞:例「食べる」→「食べられる」(食べ+られる)
- 上一段活用の動詞:例「起きる」→「起きられる」(起き+られる)
- カ行変格活用の動詞:例「来る」→「来られる」
まとめ:簡単にできる「ら抜き言葉」の見分け方
「ら抜き言葉」を見分ける際には、直前の動詞の活用を確認します。直前の動詞が五段活用の場合には「れる」をつけて可能動詞に変化させ、上一段活用・下一段活用・カ行変格活用の場合には「られる」をつけて可能の意味をあらわします。上一段活用・下一段活用・カ行変格活用にも関わらず「れる」をつけている場合、「ら抜き言葉」になります。
Step | 見分け方 |
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Step 1 | 動詞に「〜ない」をつけて未然形の形にする |
Step 2 | 「〜ない」の直前が何段になっているか確認する |
Step 3 | イ段、エ段の場合は「られる」をつける。ア段の場合は「れる」をつける |
たとえば「食べる」につけるのが、「れる」か「られる」かを見分ける場合には、未然形にすると「食べない」となり、下一段活用であることが分かります。そのため「られる」をつけるのが正しい形となります。
「食べる」を見分けたい場合
- 未然形にする「食べない」
- 「〜ない」の前はエ段
- 可能形にする場合には「られる」をつける
「ら抜き言葉」を理解して場面に応じて言葉を使い分けることで、円滑なコミュニケーションを行うための手段を身につけることができるでしょう。