「ら抜き言葉」とは:基本の定義と歴史

「ら抜き言葉」とは、可能の意味を持つ「られる」から「ら」が抜けて「食べれる」「考えれる」のようになる表現を意味します。例えば、「見れる」「来れる」がら抜き言葉になると「見れる」「来れる」のように変化します。

なぜ「ら抜き言葉」が生まれたのか:方言からの派生

「ら抜き言葉」の歴史は古く、大正時代には既に使われていたという調査もあります。「若者言葉」だと指摘されることもありますが、実際には100年以上前から中国地方などで方言として使われており、東京で使われるようになったのは関東大震災以降だと言われています。

[*出典:近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立]
[*出典:ら抜き言葉と〈れれる言葉〉と可能動詞にみられる自発・受身・尊敬の用法について]

「ら抜き言葉」のよくある例・一覧

「ら抜き言葉」の例としては、「食べれる」などがあります。本来含まれているべき「ら」が抜けています。

ら抜き言葉 例文
食べれる このレストランでは、新鮮な魚介類を食べれる。(正しくは「食べれる」)
迎えれる チームのメンバーとして迎えれることになってうれしいです。(正しくは「迎えれる」 )
辞めれる ついにストレスが多い仕事を辞めれることになった。(正しくは「辞めれる」 )
載せれる 自分の写真を簡単に載せれる。(正しくは「載せれる」 )
起きれる 疲れていても朝は早く起きれる。(正しくは「起きれる」 )
来れる 友人が週末に私の家に来れると知って、準備を始めた。(正しくは「来れる」 )
捨てれる 不要なものは簡単に捨てれる。(正しくは「捨てれる」 )
忘れれる 過去の悪い記憶は簡単に忘れれる。(正しくは「忘れれる 」)
得れる このコースを受ければ、貴重な知識を得れる。(正しくは「得れる 」)
受けれる 興味深い講義を受けれるのが、学生生活の魅力の一つだ。(正しくは「受けれる 」)
開けれる この袋は簡単に開けれるよ。(正しくは「開けれる 」)
入れれる このバッグは大きくて、たくさんの物を入れれる。(正しくは「入れれる」 )
覚えれる この言語学習アプリを使えば、簡単に新しい単語を覚えれる。(正しくは「覚えれる 」)
付けれる この本にはフードが付けれる。(正しくは「付けれる 」)

「ら抜き言葉」は間違いではないのか?

この「ら抜き言葉」は、文法上は間違いだと言われています。しかし平成27年の文化庁の調査では、「見られる」「出られる」などの言葉では、「ら抜き言葉」を使う人が、本来の言葉を使う人の割合を上回り多数派になっています

言語は常に変化していくものだという考えから、言語の「乱れ」ではなく「変化」として定着しつつあると言えます。

出典:文化庁『平成 27 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』

ビジネスシーンや教育現場での「ら抜き言葉」の問題点

一方でビジネスシーンや教育現場では避けたほうがよいと言われています。「ら抜き言葉」自体が悪いわけではありません。それにも関わらずなぜ「ら抜き言葉」は避けた方がよいのでしょうか。

それは「ら抜き言葉」が日常生活の中で使われるのは話しことばが中心で、書きことばではほとんど使われておらず「ら抜き言葉」は「誤用」と捉えられる恐れがあるからです

人によっては「ら抜き言葉」が含まれていると「気持ち悪い」「イライラする」と考える方もいます。そのため、メールやビジネス文書、論文、レポート、作文などで「ら抜き言葉」を使うことにはデメリットがあると言えます

「ら抜き言葉」を見分けるためのAIツールの活用法

wordrabbit

「ら抜き言葉」が含まれている文章を修正するには、目で見る方法と、AI文章校正ツールを使う方法があります

ビジネス文書や論文における「ら抜き言葉」は誤用だと捉えられる可能性があるため、避けたほうがよいとされていますが、1つ1つ修正するのは手間がかかります。

そこで活用できるのが、高精度の文章校正ツール「wordrabbit(ワードラビット)」です。wordrabbitを使えば、大量の文章でも、入力するだけで文法の誤りが修正されます。

例えば以下のように文章を入力するだけで、「ら抜き言葉」の間違いが瞬時に修正できます

wordrabbit

文章を入力するだけで修正候補やその理由が提示されるため、ビジネス文書や、対外的な記事、プレスリリース、プロダクトの文章など、分かりやすい日本語が求められるシーンで、手間をかけずに読みやすい文章を作成することができます。

「ら抜き言葉」の文法的な側面と教育方法

「ら抜き言葉」の文法的な側面としては、本来「られる」をつけて可能の意味をあらわす動詞に、誤って「れる」をつけることによって「ら抜き言葉」が発生します

原則1. 五段活用なら可能動詞を使う

五段活用の動詞の場合には、可能動詞を使って可能の意味を表します。以下の例のように、可能動詞を使って「〜できる」という意味を表します。五段活用の動詞には「られる」は伴いません。

可能動詞 例文
送れる 大体は時間通りに子どもを学校まで送れる。(「送られる」は誤り)
書ける 早く文章が書ける。(「書けられる」は誤り)
走れる 彼は足が速く、どんなに速いペースでも走れるのが自慢だ。(「走られる」は誤り)
話せる 彼女は数カ国語を話せる才能がある。(「話せられる」は誤り)
蹴れる どんな角度からでもボールを正確に蹴れる。(「蹴られる」は誤り)
行える このホールでは大規模なコンサートも行えるので、多くの人が利用している。(「行えられる」は誤り)
眠れる 工事が終わったのでやっと静かに眠れる。(「眠られる」は誤り)
潜れる プロのダイバーなので、深い海にも潜れる。(「潜られる」は誤り)
振り返れる 彼女は過去を振り返れる強さを持っている。(「振り返られる」は誤り)
乗れる 免許を取ったので、大型バイクにも乗れるようになった。(「乗られる」は誤り)

可能動詞の形をとっていても、すべて可能動詞とならないこともあります。例えば「見える」という語句は「富士山が見える」のように、可能ではなく、自発的な意味を持って発話している場合には、単なる自動詞として解釈されます。

原則2. それ以外の上一段活用などは「られる」を伴う

動詞が上一段活用、下一段活用、カ行変格活用の場合には、「られる」を伴って可能の意味を表します

上一段活用とは、後ろに「ない」をつけて未然形の形にした際にイ段で終わる言葉。下一段活用はエ段で終わる言葉です。カ行変格活用の動詞は「来る」だけです。国語文法では、上一段活用、下一段活用の二つに分けて考えますが、日本語文法では、両方をあわせて一段活用と考えます。日本語文法で考えた場合、「一段活用」と「来る」だけが「られる」を伴う言葉であるため、よりシンプルに理解することができます。

例えば以下の例のように、それぞれ「られる」を伴って可能の意味を表すことができます。

活用
下一段活用 「食べる」→「食べられる
上一段活用 「起きる」→「起きられる
カ行変格活用 「来る」→「来られる

なぜ「られる」を「れる」と誤るのか

上記の原則で紹介したように、原則2のように「られる」を伴うべき動詞にもかかわらず、五段活用の可能動詞の感覚で、可能を表現してしまうことで、「ら抜き言葉」が発生します。

例えば、「食べられる」の「食べる」は下一段活用の動詞のため、本来は「られる」を伴います。しかし誤って可能動詞の感覚で「れる」をつけてしまうことによって「食べれる」という「ら抜き言葉」の形になります。

他にも「られる」と「れる」を誤る理由として、「られる」が持つ、受け身・可能・尊敬の意味を区別しやすくするためだという指摘もあります。例えば「先生が見られる」という文だけを見ると、「見られる」を受け身の意味で使っているのか、それとも可能や尊敬の意味で使っているのかは明瞭ではありません。しかし「先生が見れる」と「ら抜き」にすることによって、可能の意味であることを明確にする意図が影響していると考えられます。

「ら抜き言葉」を見分ける方法:直前の動詞の活用を確認する

ここまでご紹介したように、「ら抜き言葉」を見分けるには、直前の動詞の活用を確認する必要があります

五段活用の動詞の場合には可能動詞を使い、一段活用やカ行変格活用の動詞の場合には「られる」をつけます。

上一段活用・下一段活用・カ行変格活用にも関わらず「れる」をつけている場合は「ら抜き言葉」であることが分かります。

Step 見分け方
Step 1 動詞に「〜ない」をつけて未然形の形にする
Step 2 「〜ない」の直前が何段になっているか確認する
Step 3 イ段、エ段の場合は「られる」をつける。ア段の場合は「れる」をつける

たとえば「食べる」につけるのが、「れる」か「られる」かを見分ける場合には、未然形にすると「食べない」となり、下一段活用であることが分かります。そのため「られる」をつけるのが正しい形となります。

「食べる」を見分けたい場合

  1. 未然形にする「食べない」
  2. 「〜ない」の前はエ段
  3. 可能形にする場合には「られる」をつける

さらに簡単に「ら抜き言葉」を見分けるには、AI文章校正サービス『wordrabbit』が役に立ちます。文章を入力するたびに、瞬時にら抜き言葉などの文法ミスを見つけ出して修正します。

まとめ:「ら抜き言葉」のこれから

今回の記事では、「ら抜き言葉」の基本から、その使われ方、見分け方、そして社会的な受け止め方までを掘り下げてきました。

言葉は時代と共に進化します。「ら抜き言葉」は、話しことばとしてはカジュアルに使うことができて、「可能」の意味が伝わりやすくなるというメリットもあります。社会に浸透している使い方のため、決して間違いではありません。

一方で、ビジネス向けなどの文章を作成するシーンでは、「誤用」「間違い」という指摘が避けられないため、文脈に応じた適切な使用が求められるのが現状です。

今後、「ら抜き言葉」の使われ方は、言語の進化とともに変わっていくでしょう。この変化を受け入れつつ、ビジネス文書や学術的な文章においては、伝統的な言葉遣いの重要性も忘れてはなりません。教育現場やビジネスシーンで、言葉の正確な使い方を身につけることは、コミュニケーションの質を高めるために不可欠です。

AI文章校正ツールを活用することで、言葉の正しい使い方や文脈に応じた適切な表現を学ぶ手助けとなるかもしれません。言語は私たちの日常生活に深く根ざしており、その使い方一つでコミュニケーションの印象が大きく変わることを、私たちは常に意識しておくべきです。

参考文献
話し言葉の表現としてのラ抜き言葉に関する研究概観
「ら抜きことば」と「可能動詞」