「たり」の基本・文法的な意味
「たり」は、いくつかの動作を並べて表現するときに使用する助詞です。通常は「絵を描いたり本を読んだりする」「行ったり来たりする」のように、文法的に並列構造になる動作をつなぎます。「食べたり飲んだりしている」とすることも「食べていたり飲んでいたりする」とすることもできます。
「たり」の文法的な意味としては、同時進行で同じような種類の動作を行うことや、相次いで起きることを表します。例えば、「行ったり来たりする」の場合には、「行く」という動作と「来る」という動作が反復して次々に起こることを表しています。「たり」の前にある動詞の活用語尾が「ん」で終わるときには「だり」になることもあります。
- 「たり」は助詞。
- 文法的には、同じような動作が同時進行で行われることや、相次いで起きることを意味する。
「たり」の正しい使い方
「たり」の使い方としては、「〜たり〜たりする」のように2つ並べて使うのが普通で、基本的には前者だけで使うことはできません。例えば、「休日は本を読んだり手紙を書いたりする」という文の場合、休日にすることとして「本を読む」という動作と「手紙を書く」という動作を並べており、「休日は本を読んだり手紙を書く」とすることはできません。
後の「たり」を省略するのは間違いなのか?
よくある間違いとして、「〜たり〜たり」の後ろの「たり」だけ省略してしまうケースがあります。例えば以下の例では、「釣りに行く」と「食事をする」という動作のうち、1回目だけにしか「たり」が付いておらず、2回目の「たり」は抜けています。
彼とはよく釣りに行ったり食事をしました。
彼とはよく釣りに行ったり食事をしたりしました。
「たり」の正しい使い方として、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
ワンポイント
- 普通は「〜たり〜たりする」という形でペアで使用する。
- 特に間違いが多いのは、2回目の「たり」が省略されているケース。
【覚えておきたい】「たり」を1回だけ使う場合の例文
「たり」は通常「〜たり〜たり」のように使いますが、表現方法の一つとして、繰り返さずに1回だけ使う使い方があります。例えば「会社のクレジットカードをなくしたりするといけないから、すぐに返却してください」のように、「なくしたり」とすることによって、「なくしたり(水没したり、割れたり、壊れたり……)」といった他の動作を暗示するような使い方ができます。
- 親にたてついたりして、困った子だ。
- 夫は人を悪くいったりはしません。
- そんなことを頭の中で思ったりした。
上記の例の1つ目では「親にたてついて、困った子だ」と書くこともできますが、「親にたてついたり」とすることによって、読み手に「きっと、親にたてつくだけではなく、家出などの他の問題もあるのではないか」と暗に理解させることができます。
ただし、2つの「たり」のうち省略できるのは1回目の「たり」だけです。文法的には、従属節の「たり」は省けますが、主節の「たり」は省けないということになります。省略できない「たり」の見分け方として、「〜したりする」とすることができる場合には省略できないと覚えておくとよいでしょう。
ワンポイント
- 「たり」は単独で使うこともできる。
- 単独で使う場合には、他の動作を暗示するような使い方ができる。
【補足】「たり」は3回並べる使い方もできる
「たり」は 並列助詞のため、2つ以上の動作が並ぶ場合にも使うことができます。例えば「起こったり、泣いたり、笑ったり」といったように3つの「たり」を並べて使うこともできます。
- 勉強したり、友達と遊んだり、家族と出かけたりするなど、最近の小学6年生は忙しい。
レポートや論文での「たり」の言い換えテクニック
「たり」は並列関係を表すのに適切な言葉ですが、レポートや論文などでは、「たり」が話しことばのように捉えられる場合もあります。そのような場面では、「たり」を使わずに別の言葉に言い換えることができます。
ただし、並立助詞であり述語につく「たり」と同じような並立助詞として挙げられるのは「とか」「やら」「なり」です。しかし単純に「たり」を「とか」「やら」「なり」に言い換えても話しことばらしさや、曖昧さは変わりません。そのため、「たり」を別の用語に置き換えるのではなく、以下のように文自体を調整することで、厳格な印象に修正することができます。
参加者は、自身の端末を用いて定型文を1分間で入力したり、その感想を発表したりした。
参加者は、自身の端末を用いて1分間で入力し、その感想を発表した。(「たり」の削除)
参加者は、自身の端末を用いて1分間で入力することや、その感想を発表することを行った。(「したり」を「すること」に修正)
参加者は、自身の端末を用いた1分間での入力や、その感想の発表を行った。(名詞化して並立助詞の「や」で接続)
文章校正ツールを使った「たり」の誤用チェック
最近では若者言葉として断言を避けるために「たり」を使う使い方もありますが、並列関係が分かりにくくなるため、読み手にとっての分かりにくさにつながります。しかし長い文章の中で「たり」の省略を発見するのは時間がかかるうえに、見逃してしまう場合もあります。
そこで役に立つのが、高精度の文章校正ツール「wordrabbit(ワードラビット)」です。wordrabbitを使えば、大量の文章でも、入力するだけで「たり」などの文法の誤りや誤字脱字を瞬時に発見することができます。
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【さらに詳しく】「たり」と類似表現(や、と)との比較
「たり」は、さまざまな役割を持つ助詞の中でも「並立助詞」や「接続助詞」と呼ばれます。類似の並立助詞としては、「と」「とか」「や」「ても」などが挙げられます。
ただし、同じ並立助詞でも『「や」や「と」』と、『「たり」や「とか」』では使い方が異なります。違いとしては、『「や」や「と」』は名詞を並列させるのに対して、『「たり」や「とか」』は動詞を並列させます。
助詞 | 使い方 | 例 |
---|---|---|
「や」「と」 | 名詞を並列させるときに使う | 田中さんや山本さん |
「たり」 | 動詞を並列させるときに使う | 見たり聞いたり |
※分かりやすく動詞と表記していますが、さらに詳細に解説すると、述語を並列させるときに「たり」や「とか」を使用します。
例文集:「たり」を用いた日本語の表現
「たり」が使われている例文としては、以下のようなものが挙げられます。
- 心配で部屋の前を行ったり来たりする。
- すでにシーズンが過ぎてから洋服を買いに行ったので大きかったり小さかったりして、なかなか見つからない。
- 目標を達成するために、たくさん練習したり準備したりした。
- 歩いたり、走ったりします。
- 本を読んだり音楽を聴いたりして過ごしています。
- 食べたり飲んだりしている。
- 人によってはチャリティーをやってたり、寄付したりする取り組みをしている人もいれば、学校として発展途上国に物資を送っているところもある。
- 提案したり、賢く振る舞ったりすることで、今のポジションが得られたのだと思います。
「たり」を正しく使うことで読み手の「分かりやすさ」につながる
「たり」を正しく対応させて使うのは、文法的に正しい状態にするためだけではなく、読み手に分かりやすく伝えるためです。例えば、長い文章で「たり」を省略して「先日やっととれた休みに、遠くの洗車場まで出かけて車を洗ったり、やっと手に入った大好きな作家の新刊を読んだ。」とすると、並列関係が分からず、読みにくい文になってしまいます。「たり」を省略することなく「先日やっととれた休みに、遠くの洗車場まで出かけて車を洗ったり、やっと手に入った大好きな作家の新刊を読んだりした。」とすることによって、「たり」がいわば記号のような役割を果たして、読み手が並列関係を把握しやすくなるメリットがあります。
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この記事を通じて、文章のルールを覚えたり、必要に応じてツールを役立てたりすることによって、表現したい内容を読み手に分かりやすく伝えるきっかけになれば幸いです。