基本的な意味と用法
「てにをは」とは、日本語の助詞のことです。助詞とは単語と単語とをつなぐ役割をする語で、代表的な助詞としては「は」「が」「と」「の」などが挙げられます。
由来は漢文
「てにをは」の由来は、漢文だと言われています。平安時代に漢文を訓読するとき補足する言葉を指していた「弖爾乎波(読み方は『てにをは』)」が語源となっています。
そこから派生して現代では、自立語と自立語をつなぐ役割である助詞や助動詞の別称として使われています。
品詞は助詞
「てにをは」の品詞は助詞で、助詞とは言葉に意味を肉付けする役割の語です。
「てにをは」は助詞だけを指す場合と、助詞・助動詞の両方を指す場合とがあります。しかし「て」「に」「を」「は」はすべて助詞のため、この記事では助詞として取り扱います。
助詞には、格助詞、係助詞などいくつかの種類があります。「てにをは」については「て」は接続助詞、「に」と「を」は格助詞、「は」は係助詞という品詞です。
種類 | 用途 | |
---|---|---|
て | 接続助詞 | 文と文とをつなぐ助詞 |
に | 格助詞 | 名詞のあとにつく助詞 |
を | 格助詞 | 名詞のあとにつく助詞 |
は | 係助詞 | 格助詞に意味を加える助詞 |
助詞の種類として上記に挙げたもの以外に、終助詞(「ね」「よ」)、副助詞(「くらい」)などがあり、それぞれ役割が異なります。詳細は助詞をご確認ください。
【65万文を分析して分かった】「てにをは」の使い分けで間違いやすいパターン
「てにをは」の使い分けにはいくつかの間違いやすいパターンがあります。
Wikipediaの入力誤りデータのうち約65万文を対象に、格助詞と係助詞の誤りを分析した結果、約4割で助詞が抜け漏れる誤り、約2割で助詞が入れ替わる誤りが発生していることが分かりました。
分析の詳細:入力に誤りのあるデータのうち格助詞、係助詞に誤りのあるデータを抽出してパターンを分析。 対象データ:京都大学「日本語Wikipedia入力誤りデータセット (v2) 」
「助詞の抜け漏れ」とは本来必要な箇所から「を」「が」「は」「の」「に」が脱落している誤りです。例えば、「田中さんは風邪を引いているのでのどあめ欲しいと言った」という文章では「のどあめ」の後に必要な助詞の「が」が抜けています。
「助詞の入れ替わり」とは文中の「が」と「を」、「が」と「に」などが入れ替わってしまう誤りです。例えば「私をクリスマスツリーが壊しました」では助詞の「が」と「を」が入れ替わっています。
このようなパターンがあることをあらかじめ理解しておくことによって、文章を書く際にミスが発生しないように気を配ることができます。以下の詳細については把握しておくことをおすすめします。
分析結果の詳細
誤りのパターン | 割合 |
---|---|
「を」の抜け漏れ | 9% |
「が」の抜け漏れ | 9% |
「は」の抜け漏れ | 9% |
「の」の抜け漏れ | 8% |
「に」の抜け漏れ | 7% |
「が」と「を」の入れ替わり | 6% |
「が」と「に」の入れ替わり | 5% |
「を」「に」と「の」の入れ替わり(サ変名詞+する) | 5% |
「を」「に」と「の」の入れ替わり(サ変名詞+する以外) | 5% |
その他 | 37% |
ビジネスシーンで注意したいのは助詞の抜け漏れ
「てにをは」を正しく使うスキルは、ビジネスシーンにおける文章作成で重要な観点です。それは助詞が抜けた文章を読んだ相手は、意味を取り違えてしまうことがあるためです。このように文章の意味を取り違えることを「誤読」と言います。
例えば以下の例では、「田中社長とアンドリューさんに」教えるのか、「田中社長がアンドリューさんに」教えるのかが不明瞭で、たった1文字で意味が大きく変わってしまい、文章を読んだ相手は誤読してしまう可能性があります。
田中社長、アンドリューさんにプロンプトの書き方を教える。
さらに専門的な話の場合には、助詞が抜けると相手に意味が伝わりにくくなります。例えば以下の例では、GeminiはAIのモデルの名前、ナディアは人の名前、PaLMはモデルの名前ですが、助詞が抜けると何が言いたいのか察することすらできません。
Gemini、ナディアさん、PaLM教える。
しかし「GeminiがナディアさんにPaLMを教える」とすると、それぞれの単語や概念は理解できなくても、意味を推察することができます。
実際に、このような助詞の誤りはビジネスシーンでよく見かけるものです。社内のコミュニケーションの場合は単に「間違えて恥ずかしい」「ちょっと分かりにくかった」という程度のものですが、対外的な文章においては、単なる助詞の誤りで、相手に全く違う意味が伝わることがあるため注意が必要です。
教育者・編集者・ライター向け:高度な「てにをは」の使い方
助詞をより自然に使いこなしたい場合は、特に「が」と「の」の使い分け、「が」と「を」の使い分けを把握しておくと役に立ちます。
1.「が」と「の」の使い分け
「私が読んだ本がなくなった」のように名詞を修飾する複文では、助詞の「が」を「の」に変更して書くと、より読みやすい文章にすることができます。
例えば「父が買った車が壊れた」という文章は、「車」を説明するために「父が買った」という述語を含む文がある状態です。「が」が2回使用されていますが文法的には間違いではありません。しかし、このようなケースでは「が」を「の」に交代することによって「父の買った車が壊れた」のように、「が」が2回連続しないスムーズな文章に書き換えることができます。
父が買った車が壊れた。
父の買った車が壊れた。
※「父が生徒に教えた英語がとてもよかった」のように、主語と述語の間に修飾語が入った文の場合には、「が」を「の」に交代することはできません。
2. 「が」と「を」の使い分け
「〜ができる」や「〜をほしい」など願望や可能を表現する場合には、以下の原則や例外にのっとって「が」と「を」を使い分けたほうが、より自然な表現になります。
基本原則:「〜が」よりも「〜を」を使用した方が自然な場合が多い
原則として、願望や可能を表現する場合には、以下のように助詞「〜を」を伴って書く方が統計上多いとされています。ただし「〜が」を使うのも間違いではありません。
ステファニーさんは日本語を(が)書けない(可能の表現)。
今日はステーキを(が)食べられる(可能の表現)。
そのソファーを(が)欲しい(願望の表現)。
春らしい食事を(が)食べたがっている(願望の表現)。
例外1:間に就職語が入る場合は「〜を」を使う
1つ目の例外として、助詞と述語の間に修飾語が入る場合の助詞には、「〜が」ではなく「〜を」を使用します。以下の例では、「炭酸飲料がたくさん飲みたい」とするのは文法的には不自然で「炭酸飲料をたくさん飲みたい」と書きます。
炭酸飲料ががくさん飲みたい。
炭酸飲料をたくさん飲みたい。
例外2:「〜がっている」の場合は「〜を」を使う
2つ目の例外として、希望を表現する「〜がっている」という表現を使う場合の助詞には「〜が」ではなく「〜を」使用します。
子どもたちは新しい靴が欲しがっています。
子どもたちは新しい靴を欲しがっています。
例外3:「〜できる」の場合は「〜が」を使う
3つ目の例外として、可能を表現する「〜できる」や「可能です」を使用する場合、助詞には「〜が」を使用します。特に「〜ができます」といった表現では、「を」を伴っているケースも多く見られますが、「が」を伴うとより自然な表現にすることができます。
掃除を可能です。
掃除が可能です。
掃除をできます。
掃除ができます。
参考文献:庵 功雄(1995)「ガ〜シタイとヲ〜シタイ —直接目的語の格表示のゆれ—」
「てにをは」の間違いを避けるためのチェックポイント
「てにをは」の間違いを防ぐには、これまでご紹介したような「助詞の抜け漏れ」や「助詞の入れ替わり」に注目して、文章を確認します。
抜けや漏れは、文を読み返せば気づけることが多く、一度見返すだけでもある程度のミスは防げるでしょう。
しかし文を途中で書き換えた場合や、複数人で作業している場合には、助詞が入れ替わったまま気づかないことがあります。「文を書いている途中で述語を変えて、そのまま助詞を修正し忘れているケース」があることを意識すると、助詞の間違いが防ぎやすくなります。
レベル | チェック箇所 | ポイント |
---|---|---|
基本 | 助詞の抜け漏れ | 本来助詞が必要な箇所から助詞が抜けていないか |
基本 | 助詞の入れ替わり | 助詞が複数ある文章で「が」と「を」などが入れ替わっていないか |
応用 | 「が」と「の」の使い分け | 「〜が〜が」のような文章で「が」を「の」に置き換えているか |
応用 | 「が」と「を」の使い分け | 助詞と述語の間に修飾語が入る場合に「を」を使用しているか |
応用 | 「が」と「を」の使い分け | 「〜がっている」の前の助詞として「を」を使用しているか |
応用 | 「が」と「を」の使い分け | 「〜できる」の前の助詞として「が」を使用しているか |
文章校正ツールを使った「てにをは」の効果的なトレーニング方法
「てにをは」を使いこなすためにトレーニングをしたい場合には、人に添削してもらう方法と、文章校正ツールを使って添削しながら学習する方法があります。
すぐそばに添削してくれる人がいれば、添削をお願いするのもよいでしょう。しかし、人にお願いする場合には自分の書きたいタイミングで添削してもらうことはできないというデメリットがあります。
そこでおすすめなのが、高精度の文章校正ツール「wordrabbit(ワードラビット)」です。wordrabbitを使えば、文章を入力するだけで以下の画像のように修正候補が提示されます。
トレーニングの方法としては、自分の書いた文章を入力するだけです。「てにをは」の誤り以外にも、「らぬき言葉」「漢字の誤り」「い抜き言葉」など多くの文法をチェックすることができます。
2週間無料でお試しできるため、「より正しいてにをはを身につけたい」「てにをはの使い方に自信がない」という方はぜひ「wordrabbit(ワードラビット)」をお試しください。
実例:文章校正ツールを使って「てにをは」のミスを減らす
実際に、文章校正ツール「wordrabbit」を使って文章の「てにをは」を修正する様子をご紹介します。
まずは以下の画像のように、文章を画面上に貼り付けます。
修正理由を確認して、「修正」ボタンを押すと、「てにをは」の誤りを修正することができます。
このような修正を繰り返していくことによって、誰でも簡単に、より自然な「てにをは」を学ぶことができます。
専門知識:「てにをは」の使い分けは述語によって決まる
「てにをは」を正しく使い分けるために知っておきたいのが、どの助詞を使うのかは、述語によって決まるということです。例えば、「教える」という述語は、「〜が〜を教える」「〜が〜を〜に教える」といったように「が」「を」「に」といった助詞を伴うことがあらかじめ決まっています。
このように、述語と格要素の関係を表したものを、言語学の領域では、格フレームといいます。
「てにをは」の使い分けは、日本語が母国語の方であれば、普段それほど意識せずに行っています。一方で、日本語が母国語ではない方にとっては、難しいものとなります。
それは、日本語が母国語ではない方が「てにをは」を正しく使い分ける場合、「この述語はこの助詞を伴う」といった多くのパターンを学習する必要があるためです。
実際に日本語が母国語ではない方が書いた文章の誤りとしては、例えば「ちょっとテストの結果までに待ちます」「確認しましてエラーを出ていました」といったものがあります。これらの文章に違和感があるのは、「待つ」は必要な格助詞として「に」を取らないこと、「出る」は必要な格助詞として「を」がとらないことが原因です。
まとめ:「てにをは」を理解して伝わる文章を書く
「てにをは」とは何で、どんな品詞なのか。今回は、その正しい使い方や用法を詳しく解説しました。助詞は日本語の中で不可欠な役割を果たし、言葉に肉付けをしていく役割を果たす言葉です。多くの日本語ネイティブスピーカーは無意識のうちに使用していますが、誤った使い方をしていることに気づかないことも少なくありません。
こうした課題に対して役に立つのが「wordrabbit(ワードラビット)」です。あなたの書いた日本語の文章を精密に分析し、「てにをは」を含む助詞の使用に関して具体的なフィードバックを提供します。
より自然で、伝わる日本語を書くための実践的な学習を進めることによって、正しい助詞の使い方を身につけ、読み手にとってより分かりやすく、誤読のない文章を目指しましょう。