受け身とは

受け身は、他から動作を受けることを意味します。受動態とも呼ばれます。例えば「田中さんが私を褒める」に対して「私が田中さんに褒められる」といった状態が受け身です。主語の意志に関係なく、他者から何かをされることをあらわします。日本語は主語を省略して表現することが多いため、受動態の文章が頻繁に見られます。

「受動態」の逆を「能動態」と言います。能動態は、動作の働き方が主語から他へ及ぶことをあらわします。

受け身文の作り方

受け身は、受け身の意味をあらわす助動詞「れる」「られる」を伴って受け身の形となります。例えば「読む」に対して「読まれる」、「育てる」に対して「育てられる」といった方法で作ることができます。

受け身の例文

受け身の例文
- 人に信頼される。(信頼する + 「れる」)
- 母に育てられる。(育てる + 「られる」)
- 彼に憎まれる。(憎む + 「れる」)
- 先生に褒められた。(褒め + 「られる」)

受け身の種類

受け身文には、直接受け身、間接受け身、持ち主の受け身という、3つの種類があります。

1. 直接受け身

直接受け身は、能動態が受動態に変化する時に、主語と動作の受け手が中立的に入れ替わるものを指します。例えば、「姉が弟をしかる」が「弟は姉にしかられる」に変化するような文が直接受け身です。中立受け身とも呼ばれます。

直接受け身の例

  • 能動態「姉が弟をしかる」→受動態「弟が姉にしかられる」
  • 能動態「先生が生徒に話しかける」→受動態「生徒が先生に話しかけられる」
  • 能動態「徳川家光が東照宮を建てた」→受動態「東照宮は徳川家光によって建てられた」
  • 能動態「会長が胡蝶蘭を送った」→受動態「胡蝶蘭は会長から送られた」

能動態では「〜を」「〜に」を伴う名詞が、直接受け身では主語になります。例えば、「姉が弟しかる」では「〜を」を伴う「弟」が主語となり、「弟が姉にしかられる」となります。「先生が生徒話しかける」では「〜に」を伴う「生徒」が主語となり「生徒が先生に話しかけられる」と変化します。

2. 間接受け身

間接受け身とは、能動態にはない名詞が主語になる文です。例えば受動態の「田中さんは雨に降られた」を能動態に戻そうとする時には、「雨が田中さんに降った」ではなく「雨が降った」という文が自然です。名詞である「田中さん」は受動態では必要ですが、能動態には不要です。間接受け身文は、被害の意味を含むため、「迷惑受け身」とも呼ばれます。

3. 持ち主の受け身

持ち主の受け身とは、主語の「身体部位・所有物・関係者」が受け身となる文です。例えば「私は子供を先生にほめられた」では、主語である「私」の関係者である「子供」が先生に「ほめられた」ため、持ち主の受け身だと言えます。「私は背中をたたかれた」では、主語である「私」の身体部位である「背中」が「叩かれた」ため、持ち主の受け身となります。

受け身の文を見分けるポイント

受け身の文は、人信頼される、のように、前に「〜に」「〜を」といった、受身の動作の主体があります。主語が省略される場合もあります。

受け身の文の見分け方

  • 前に「〜に」「〜を」といった受身の動作の主体がくる。
  • 主語が省略される場合がある。

受け身の助動詞「れる」「られる」の活用表

受け身の助動詞「れる」「られる」には活用があります。活用とは前後にくる語によって形が変わることです。

受け身の助動詞「れる」「られる」の活用表

活用の種類 れる られる
未然形 られ
連用形 られ
終止形 れる られる
連体形 れる られる
仮定形 れれ られれ
命令形 れろ、れよ られろ、られよ

未然形:〜ないに連なる形 (られない)
連用形:〜た〜ますに連なる形 (られた)
終止形:言い切る形 (られる)
連体形:〜とき (られるとき)
仮定形:〜ばに連なる形 (られれば)
命令形:命令する形(られろ、られよ)

「れる」「られる」の別の意味

「れる」「られる」という助動詞には受け身以外に、文脈によって「尊敬・自発・可能」といった意味を持ちます。

(1)尊敬の意味

尊敬は、相手の動作を敬うことを意味します。

先生が話される。(話す + れる)
お客様が来られる。(来る + られる)

(2)自発の意味

自発は、意識しなくても自然とそうなることを意味します。「思う」や「感じる」という気持ちをあらわす言葉が用いられる際に、自発の意味となる場合がよくあります。

思い出される。(思い出す + れる)
遠くにいても君の優しさが感じられる。(感じる + られる)

(3)可能の意味

可能は、できることを意味します。英語では「can」にあたります。

簡単に遠くまで投げられる。(投げる + られる)
苦手なものも食べられる。(食べる + られる)

日本語で多く用いられる受け身表現

日本語は、話し手が主語になることが多いため、自然と受け身の文が多く見られます。受け身文を適切に使いこなすことは、より分かりやすい文章を書くことにつながります。文章を書く際には、無意識に受動態を用いるのではなく、能動態との違いを把握したうえで用いましょう。