授受動詞(やりもらい動詞)とは
授受動詞は、誰かと物をやりとりする際に使う動詞です。やりもらい動詞とも言います。例えば、「あげる」「もらう」「くれる」が授受動詞です。誰かから誰かに対して、物が移動したり、行為がされたりする時に使われます。
授受動詞を使って授受を示す表現を、「授受表現」や「やりもらい表現」と言います。
授受動詞の例
授受動詞の例
- やる
- あげる
- さしあげる
- くれる
- くださる
- もらう
- いただく
授受動詞の使い方・用法
授受動詞は、誰から誰に対して物や行為が移動するかによって、使い分けます。
例えば、「お母さんが子どもに対してチョコを渡す」というシーンは、授受動詞「あげる」「もらう」「くれる」を使用して、以下の3つの形で表現できます。
- 私は子どもにチョコをあげた。
- 僕はお母さんからチョコをもらった。
- お母さんが僕にチョコをくれた。
「あげる」と「もらう・くれる」の違い
「あげる」と「もらう・くれる」の違いは、「物」が「自分の領域(ウチ)」と「自分以外の領域(ソト)」のどちらからどちらへ移動したのかという点です。
「あげる」は「物」がソトに出る場合に使います。一方、「もらう・くれる」は「物」がウチへ移動する場合に使います。
「もらう」と「くれる」の違い
「もらう」と「くれる」の違いは、文の主語が「自分の領域(ウチ)」と「自分以外の領域(ソト)」のどちらにあるのかという点です。
「もらう」は「自分の領域(ウチ)」が主語の場合に使います。一方、「くれる」は「自分以外の領域(ソト)」が主語の場合に使います。
授受動詞の尊敬語、謙譲語
授受動詞は、敬語表現にもできます。「あげる」は尊敬語にすると「さしあげる」となり、「もらう」は謙譲語にすると「いただく」となります。「くれる」を尊敬語にすると「くださる」となります。
授受動詞 | 尊敬表現 |
---|---|
あげる | さしあげる(尊敬語) |
もらう | いただく(謙譲語) |
くれる | くださる(尊敬語) |
例えば、「山田さんにぶどうをさしあげる」とすることによって「山田さんにぶどうをあげる」という形と比較して、山田さんに対する敬意を表すことができます。
授受表現を補助動詞として使う
授受表現は、「〜てあげる」という補助動詞の形で用いることができます。
補助動詞の例
- 〜てあげる
- 〜てもらう
- 〜てくれる
例えば、「田中さんに本を送ってあげた」では、「送る」という動詞に対して「〜てあげる」が補助動詞として使われています。他には、「お母さんに本を買ってもらった」「子どもが寝てくれたのでゆっくり休めた」といったように使用できます。
補助動詞とは、動詞の中で、本来の動詞の意味を失って付属的に用いられるものを言います。
補助動詞の尊敬語、謙譲語
補助動詞は、敬語表現の形にして用いることができます。「〜てもらう」は尊敬語にすると「〜ていただく(ご〜いただく)」となり、「〜くれる」は尊敬語にすると「〜てください(ご〜ください)」となります。
補助動詞を敬語表現にした場合
- 〜ていただく(ご〜いただく)
- 〜てください (ご〜ください)
例えば「先生に確認してもらう」は、尊敬表現にすることによって、「先生に確認していただく」や「先生にご確認いただく」となります。
ただし、「〜てあげる」の形の補助動詞については、目上の人に対して使用する敬意表現として使用できません。例えば、「部長に話してあげる」という文に敬意を加えたい場合には「部長に話して差し上げる」とはなりません。この場合には「部長に申し上げます(謙譲表現)」とするか「部長にお聞きいただく(尊敬表現)」となります。
授受表現の補助動詞は恩恵の意味を表す
授受表現の補助動詞は、多くの場合、恩恵の意味を表します。例えば、以下の例では「言葉の意味が分からずに困っていたところ、友人が教えてくれた」とすることによって、友人から自分に対して、恩恵がもたらされたことを表現できます。
- 言葉の意味が分からずに困っていたところ、友人が教えた(授受表現にしない場合)
- 言葉の意味が分からずに困っていたところ、友人が教えてくれた(授受表現にした場合)
このように、多くの場合、授受動詞は恩恵の意味を表す用法で使われますが、「動作を遂行する決意を表す用法」や、「よくない影響が話し手に及ぶことを表す用法」もあります。
動作を遂行する決意を表す用法とは、例えば「いつか見返してやる」のような表現。よくない影響が話し手に及ぶことを表す用法とは、例えば「よくもこんなに散らかしてくれたものだ」のような表現です。
授受動詞を活用して、日本語の表現を広げる
授受動詞は、誰かと物や行為をやりとりする際に使用する動詞で、主に恩恵の意味を表現できることを取り上げました。授受動詞の使い方を理解することによって、文に意味を加えることができます。使い方をコントロールしながら、適切に使用しましょう。